▼ この記事の内容
本記事の架空の計算例では、対象者・期間・退職の範囲を決めたうえで、営業の離職率を「期間中の対象営業部門の退職者数÷期首の対象営業人数×100」で計算し、退職者数と分母の人数を併記します。前年や公的統計と比べる前に集計条件を見比べ、率の変化だけで原因を決めつけず、自社の条件と確認元を記録して人事と人数を確かめることが判断の前提になります。
営業の離職率が下がっても、退職者数が減ったとは限りません。退職者数が同じでも、分母となる期首人数が増えれば率は下がるため、報告された割合と計算に使った人数を併せて確認します。
自社の営業離職率を確認する前に決めるのは、対象者・期間・分母・退職の範囲です。前年や他部門と比べる際も、率だけで判断せず、計算に使った人数と集計条件を見比べます。
営業部門全体を対象に、集計条件のそろえ方と架空の計算例、公的統計との比較で注意する点を整理します。人事と人数を確かめ、次回も同じ条件で集計するための記録項目も解説の対象です。
営業の離職率で分かる退職者の割合
営業の離職率は、対象営業部門の退職者数が基準となる在籍人数に対してどれだけあるかを示す割合であり、この割合だけでは退職理由や新人の定着状況までは分かりません。営業部全体を対象にするのか、一部の営業チームを対象にするのかを明記し、新人だけでなく、決めた範囲に属する中堅やベテランも含めます。
営業部門の退職者数を在籍人数に対する割合で見る
自社の営業離職率は、対象とする営業部門の退職者数を、基準となる在籍人数に対する割合で示します。誰を対象に、いつからいつまでの退職を数えたかによって値が変わるため、率と集計条件をセットで確認します。
離職率を見る際は、退職者数と、割り算の基準にした在籍人数も並べます。率だけでは、何人が退職した結果なのか、対象部門の人数が変わったのかを区別できません。
社内資料に「営業離職率」とだけ書かれている場合は、計算に使った名簿と集計期間を確認します。前年や別部門の数値と比べる前に、同じ条件で数えた率かどうかを確かめることが出発点です。
新人の定着率や退職意向とは分けて考える
営業全体の離職率と新人の定着率は、確認する対象が異なります。営業全体の離職率では対象部門の退職を集計し、新人の定着率では同じ時期に入社した人たちが、一定期間後も在籍しているかを追います。
新人の定着率を100%から引いても、そのまま営業全体の離職率にはなりません。対象者や観察期間が違ううえ、会社への在籍と営業部門への在籍のどちらを確認したかによっても、数える人が変わるためです。
退職意向は、本人が退職を考えているかを尋ねた回答です。実際に会社を退職した人数とは区別し、回答者の割合を退職者の割合として報告しないようにします。
営業部門で実際に起きた退職を把握したいなら、退職日を確認した人数を集計します。新人の在籍状況や本人の意向も確認する場合は、それぞれの対象と期間を別に記録し、一つの率へまとめないことが前提です。
計算条件は対象者・期間・退職の範囲を統一する
集計を始める前に、対象部門、雇用区分、期間の開始日と終了日を決めます。営業マネージャーの手元の名簿だけで判断せず、人事が管理する所属情報と照らし合わせて確認できる範囲を明記します。
営業の対象者と集計期間を定める
雇用区分は、分子と分母でそろえることが前提です。正社員だけの在籍人数を分母に使うなら、退職者数も同じ雇用区分から数え、契約社員などを含める場合は両方の集計範囲を変更します。
集計期間は「今年」ではなく、開始日と終了日で残します。暦年と年度では対象になる退職日が異なるため、前年と比較する際の確認点は、期間の長さと区切り方です。
| 項目 | 決める内容 | 確認する情報 |
|---|---|---|
| 対象部門 | 含める営業部門・チームを列挙します。 | 確認するのは、組織図と所属名簿です。 |
| 雇用区分 | 対象にする雇用区分を明記します。 | 合わせる基準は、人事の雇用区分です。 |
| 集計期間 | 開始日と終了日を記入します。 | 確認するのは、退職日が期間内かどうかです。 |
| 分母 | 期首など、人数を数える基準日を決めます。 | 確認するのは、基準日時点の在籍名簿です。 |
| 分子 | 期間中に数える退職の範囲を決めます。 | 確認するのは、退職者一覧と所属履歴です。 |
期首人数を分母にする場合は、集計開始時点の名簿を保存します。現在の名簿で代用すると期中の入社や異動が混ざるため、後から同じ計算を再現できるよう、基準日と元資料をセットで残します。
退職者と異動者を分けて記録する
会社を退職した人の割合を集計する場合、営業部門から他部署へ異動した人は退職者に含めません。営業の担当人数が減ったという点は共通していても、会社への在籍が続いているかどうかは異なります。
会社退職の範囲を決める際のポイントは、自己都合だけを数えるか、定年や契約満了なども含めるかです。年度ごとに対象を変えると比較の意味が変わるため、理由の区分は人事の記録に合わせ、集計対象かどうかを明示します。
休職者も、営業活動に参加していないことだけを理由に退職者として扱いません。休職中の人を基準日の在籍人数に含めるかを決め、休職と退職を別の欄で管理します。
期中入社や部署間の異動で残すのは、発生日と所属の履歴です。退職時点で対象部門に所属していたかなど、退職者を数える条件を人事とそろえます。扱いが未確認の人は、確定した人数に混ぜず、人事に確認してから集計対象に含めるかを決めます。
営業の離職率を計算する方法と架空の例
ここで示す自社向けの集計方法は、離職率(%)=期間中の対象営業部門の退職者数÷期首の対象営業人数×100です。退職者数が分子、期首人数が分母に当たり、期末や現在の人数へ無断で置き換えないようにします。
期間中の退職者数を期首の営業人数で割る
ここでは、自社向けの集計方法として、期間中の対象営業部門の退職者数を期首の対象営業人数で割ります。対象部門と雇用区分をそろえ、会社退職を数える条件を決めたうえで計算します。
架空の例として、期首の対象営業人数が40人、期間中の会社退職者が4人だったとします。計算は4÷40×100=10%となり、この集計条件での営業離職率は10%です。
| 期首の対象営業人数 | 期間中の会社退職者数 | 計算 | 離職率 |
|---|---|---|---|
| 40人 | 4人 | 4÷40×100 | 10% |
この10%は説明用の計算結果であり、営業職の相場や適正水準を示す値ではありません。期首人数が0人の場合はこの式では算出できないため、0%とはせず、算出不可の理由と期間中の人数を記録します。
期中入社者を含む集計と期首時点の集団を分ける
期間中に退職した人を数える方法と、期首にいた人の退職を追う方法の違いは、分子です。前者は対象部門で期間中に起きた退職を把握するため、条件に該当する期中入社者の退職も含めます。
架空の例として、先ほどの退職者4人の内訳を、期首在籍者3人、期中入社者1人とします。期首人数40人を分母に期間中の退職者全員を数えると10%ですが、期首にいた人だけを追うと3÷40×100=7.5%です。
| 確認する内容 | 退職者の数え方 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 期間中に対象部門で起きた退職を確認します。 | 期首在籍者3人と期中入社者1人を数えます。 | 4÷40×100 | 10% |
| 確認対象は、期首にいた人の退職です。 | 期首在籍者のうち退職した3人を数えます。 | 3÷40×100 | 7.5% |
二つの結果の差である2.5ポイントは、数える対象の違いから生じています。同じ期間の同じ退職記録を使っていても、答えている問いが違うため、離職が改善した証拠にはなりません。
期中入社者の人数と入社日も、退職者の内訳とは別に記録します。期首集団を追う表に期中入社者を追加せず、どの時点の誰を追っているかが分かる名前を集計表に付けます。
公的統計と自社の営業離職率を比べる際の注意点
公的統計との比較で、率の数値より先に確認するのは用語の定義です。自社の「退職者」や「期首人数」の集計対象が、調査で数えている人の範囲と一致するかを確かめるためです。
公的調査の対象範囲と分母の基準日を確かめる
厚生労働省の「令和7年 雇用動向調査結果の概要」にある用語定義では、離職率の分母に1月1日現在の常用労働者数を用い、年齢階級別では、6月末日現在の常用労働者数を用いる点が異なります。[1]
同じ厚生労働省の用語定義では、離職者の範囲から同一企業内の他事業所への転出者を除いています。[1]自社の集計でも、会社退職と部署異動を分けて記録し、人数の増減だけで同じ扱いと判断しないことが前提です。
基準日が一致していても、事業所を離れた人を数える調査と、自社の会社退職を数える表が同じ対象になるとは限りません。用語の名前だけで一致とせず、対象者と退職の範囲まで確認してから比較します。
参考:令和7年 雇用動向調査結果の概要:主な用語の定義|厚生労働省
産業別の離職率を営業職全体の平均と取り違えない
産業別の離職率を、営業職全体の平均として扱うことはできません。企業が属する産業で分けた集計と、営業という職種で分けた集計では、対象者の集め方が異なります。
自社と同じ産業の数値であっても、その対象が営業職に限られるとは限りません。全社や産業全体の率を営業部門の目標値に使う前に、どの職種と雇用区分が含まれているかを確かめます。
比較用の資料には、数値と併せて次の条件を記入します。相手側の条件が分からない項目は「未確認」とし、自社と一致しているものとして埋めないことが原則です。
| 見比べる項目 | 自社側で記録する内容 | 比較先で確認する内容 |
|---|---|---|
| 対象集団 | 営業部門の範囲を記入します。 | 確認するのは、企業・事業所・産業・職種のどの範囲かです。 |
| 期間 | 開始日と終了日を記入します。 | 確認するのは、同じ期間の退職を数えているかです。 |
| 雇用区分 | 対象の雇用区分を記入します。 | 確認するのは、対象者の定義です。 |
| 分母の基準日 | 在籍人数を数えた日を記入します。 | 確認するのは、分母の人数を数える時点です。 |
| 退職の範囲 | 含める退職と除く異動を記入します。 | 確認するのは、離職者の定義と除外条件です。 |
| 条件の一致 | 一致・不一致・未確認を項目ごとに記入します。 | 残すのは、不一致の内容と未確認の箇所です。 |
条件が合わない率は、背景を知る参考値として扱い、差だけで自社の良し悪しを決めません。営業職全体を対象とする確認済みの全国平均はここでは示さず、まず同じ条件で集計した自社の推移を確認します。
営業離職率の変化を退職者数と集計条件から読む
前年との比較では、離職率、退職者数、分母に使った人数を並べます。率が下がっていても退職者数が減っているとは限らず、人数を見なければ変化を説明できません。
前年と退職者数・分母を並べて比較する
比較する前に、前年も同じ部門、雇用区分、期間の区切りで数えていたかを確認します。前年は営業部全体、当年は一部のチームという集計では、率の差に対象範囲の違いが混ざります。
架空の例では、前年は期首40人に対して退職4人、当年は期首50人に対して退職4人という設定です。集計条件が同じなら、離職率は前年10%、当年8%となります。
| 期間 | 期首の対象営業人数 | 期間中の退職者数 | 離職率 |
|---|---|---|---|
| 前年 | 40人 | 4人 | 10% |
| 当年 | 50人 | 4人 | 8% |
この例では離職率が低下していますが、退職者数は4人のままです。報告では「退職者数は変わらず、期首人数が40人から50人に増えた」と併記し、退職した人が減ったという説明と区別します。
離職率の変化だけから原因を決めつけない
離職率の上昇や低下だけでは、何が退職に影響したかまでは分かりません。育成方法や使用するツールを変えた時期と重なっていても、率の変化をそのまま施策の効果として説明しないようにします。
最初に確かめるのは、採用、異動、組織変更によって集計対象が変わっていないかです。期首人数の増減に加え、期中入社者の退職を含めたか、対象にする雇用区分を変えたかも前年の記録と見比べます。
条件がそろっていると確認できたら、退職日と所属の元データを見直します。そのうえで背景を調べる場合は、本人が説明した理由、担当業務、仕事の負担、相談後の対応などを別に確認し、率から理由を推測して埋めないことが前提です。
新人への支援を確認する必要がある場合も、営業全体の集計と新人の状況確認は分けて進めます。新人が定着しない状況を調べる際は、教え方・相談先・仕事の負担を確認する方法を参考に、本人の説明と業務記録を照らし合わせて見直す内容を決めます。
営業育成・研修 新人が定着しない職場の特徴とは?|教え方・相談先・負担の確認方法
自社の営業離職率に使う集計条件を記録する
次回も同じ条件で集計するために一つの表に残すのは、対象者、期間、退職者の数え方、分母の基準日です。計算結果だけを保存するよりも、数値を確認する担当者が計算に使った人数と集計条件を確かめやすくなります。
対象者・期間・分子・分母を表に記録する
条件記録表には、自社で決めた内容と、その確認元を分けて書きます。部門名や日付だけでなく、どの時点の名簿や退職者一覧を使ったかも記録するのは、現在の名簿への置き換わりを防ぐためです。
| 項目 | 自社で決めた条件 | 確認元 |
|---|---|---|
| 対象部門 | 含める営業部門・チームを記入します。 | 記録する確認元は、組織図と所属名簿です。 |
| 雇用区分 | 対象にする雇用区分を記入します。 | 記録する確認元は、人事が確認した雇用区分です。 |
| 開始日・終了日 | 集計期間の両端の日付を記入します。 | 記録する確認元は、社内の集計期間の取り決めです。 |
| 分母の基準日 | 期首人数を確定する日を記入します。 | 記録する確認元は、その日付の在籍名簿です。 |
| 期首人数 | 対象条件に合う人数を記入します。 | 記録する確認元は、集計に使った名簿です。 |
| 退職の定義 | 含める退職理由と除外する異動を記入します。 | 記録する確認元は、人事と確認した区分です。 |
| 期間中の退職者数 | 対象条件に合う退職者数を記入します。 | 記録する確認元は、退職日と所属を確認した一覧です。 |
| 期中入社者の扱い | 期間中の退職者に含めるかを明記します。 | 記録する確認元は、入社日・所属・退職日の履歴です。 |
| 異動・休職の扱い | 分子と分母に含める条件をそれぞれ記入します。 | 記録するのは、異動日と休職状況の確認元です。 |
| 算式 | 退職者数÷期首人数×100など、採用した式を記入します。 | 記録する確認元は、社内で合意した計算方法です。 |
| 更新日 | 条件と人数を確認した日を記入します。 | 記録するのは、確認担当者と更新履歴です。 |
架空の例をこの表に転記するなら、期首人数は40人、期間中の退職者数は4人、算式は4÷40×100と記入します。期中入社者の退職1人を含む例では、その扱いも記入し、期首在籍者だけを追った7.5%と混同しないようにします。
まだ確認できていない条件に記入するのは、「未確認」と確認する相手です。空欄や不明な人数を0として計算せず、確定している範囲と人事への確認が必要な範囲を分けます。
人事と確認して次回も比較条件をそろえる
営業側は対象部門と確認したい内容を整理し、人事側とは在籍・入社・退職・異動の記録を見比べます。人数の確定前に集計条件表を共有するのは、担当者によって対象者の判断が変わらないようにするためです。
最初に記録を見比べる際は、合計人数だけでなく、集計に含めた人と除いた人の条件も確認します。人数に差があった場合は、次の項目を調べます。
- 退職日が集計期間内にあるかを確認します。
- 所属と雇用区分が集計対象に合っているかを確認します。
- 異動や休職の扱いが合意した条件と一致しているかを確認します。
差が生じた項目を特定し、人事と扱いをそろえてから人数を確定します。
組織変更などで定義を変えるときに記録するのは、変更日と変更内容です。前年分を同じ条件で集計し直せるなら比較表を更新し、集計し直せない場合は、条件変更があったことを率の横に明記します。
次回の集計日と確認担当者を決め、人数の確定と条件の見直しを同じ手順で進めます。新人支援に使う離職防止ツールの検討へ進む場合は、回答負担・閲覧範囲・支援担当者などの選定条件を確認し、導入したことだけで離職率が改善すると判断しないようにします。
営業育成・研修 離職防止ツールのおすすめは?|新人営業の支援目的別に選び方を解説
まとめ:営業離職率は集計条件をそろえて比べる
営業の離職率を計算する際は、対象部門と雇用区分、集計期間、分母の基準日、退職として数える範囲をそろえます。計算結果には退職者数と分母の人数を併記し、何人を対象にした割合なのかを確認しましょう。
前年や公的統計との比較では、対象者や数え方の違いを先に確かめます。率の上昇や低下だけで退職の原因や施策の効果を決めつけず、人数と集計条件の変化を見比べることが前提です。
まずは自社の条件記録表を埋め、在籍名簿や退職者一覧を人事と確認してください。未確認の項目と確認担当者を残し、次回の集計日まで決めておきましょう。
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