▼ この記事の内容
組織営業は、顧客情報を共有し、役割と案件を進める判断基準をそろえて営業を進める考え方です。顧客の要望や未確認の条件を判断材料とし、誰が何を確かめ、その回答を誰と検討するかまで共有します。担当者交代に備え、確認済みの事実と推測を分けて残すことが基本です。
顧客への次の対応を組織で考えるには、担当者以外の人にも商談の経緯と判断の理由が伝わる必要があります。顧客情報を記録していても、誰が何を確認し、どの条件で提案を進めるかが分からなければ、対応の前提はそろいません。
組織営業とは、顧客情報を共有し、役割と案件を進める判断基準をそろえて営業を進める考え方です。担当者が築いた顧客との関係を大切にしながら、要望や未確認の条件を、対応と判断に関わる人へ伝えます。
組織営業と個人営業の違いを整理したうえで、顧客情報・役割・判断基準のつながりを説明します。担当者が替わる場面の架空の記入例を通じて、確認済みの事実と未確認情報を分け、次の担当者が何を確かめるかを考えます。
組織営業の意味と成り立ち
顧客への対応を組織で考えるには、担当者以外の人にも、商談の経緯と判断の理由が伝わる必要があります。顧客情報、確認と対応の担当、提案を進める条件をつなげることで、誰が顧客を担当しているかとは別に、営業の進め方を共有します。
組織営業が指す営業の進め方
組織営業とは、顧客情報を共有し、役割と案件を進める判断基準をそろえて、営業活動を組織で進める考え方です。ここでは、担当者以外の人も商談の経緯を把握し、次の対応を判断するための基本として説明します。
顧客情報は、次の提案を考える材料です。顧客が何に困っているか、何を確認済みか、何がまだ分からないかを共有すると、担当者以外の人も提案の前提を把握できます。面談を実施したという記録だけでは、顧客の要望や次に確認する内容までは伝わりません。
役割は、誰が何を確認し、誰が顧客への対応を受け持つかを指します。顧客への連絡を担当者が担い、提案を進める条件を営業マネージャーと確認する場合も、役割を分けて考えます。顧客との窓口を増やすことだけが、組織で営業を進める方法ではありません。
判断基準は、提案を進めるか、追加の確認へ戻るかを決める条件です。顧客の要望が確認済みなら提案を考え、要望が不明なら顧客に確かめるというように、情報と次の対応をつなぎます。顧客情報を保存するだけでなく、その情報を誰が何の判断に使うかまで共有することに意味があります。
人数や分業だけでは組織営業といえない理由
組織営業に当たるかどうかは、顧客を担当する人数や部署の数だけでは決まりません。顧客の情報と営業を進める基準を、担当者以外にも共有しているかを分けて考える必要があります。
複数人で顧客を担当していても、各自が別々に商談の経緯を把握しているだけなら、次の対応の前提はそろいません。ある担当者は提案を進めるつもりでも、別の担当者は顧客への確認が必要だと考える場合があります。分業の有無とは別に、何が確認済みで、何を根拠に対応を決めるかを共有する必要があります。
反対に、顧客との窓口が1人でも、顧客情報や提案を進める条件を営業マネージャーと共有していれば、組織として営業に取り組むことは可能です。担当者が築いた顧客との関係を保ちながら、商談の経緯や判断の理由を組織で把握することは両立します。
東京大学ものづくり経営研究センターが公開した山城慶晃さんの研究では、営業活動への組織的な取り組みと、顧客を担当する主体が個人か集団かを分けて整理しています。[1]これは2022年11月の未定稿に示された仮説的な概念整理であり、確立した標準分類として扱うものではありません。組織営業と個人営業の違いも、担当人数だけでなく、情報や判断を誰と共有するかから考えます。
参考:組織営業という概念に関する仮説的整理分類|東京大学ものづくり経営研究センター
組織営業と個人営業は何が違うか
顧客情報・役割・判断を誰と共有するか
組織営業と個人営業の違いは、顧客情報や営業の判断を誰と共有するかにあります。本記事で比較する個人営業は、担当者個人を中心に営業を進める方法を指します。消費者向けの営業という顧客の区分とは分けて考えます。
比較するときは、顧客情報を把握している人、確認や対応を受け持つ人、提案を進める条件を共有している人を整理します。以下の表は、営業の進め方を説明するための比較です。人数や成果の優劣を示すものではありません。
| 比較する項目 | 担当者個人を中心に進める場合 | 組織で共有して進める場合 |
|---|---|---|
| 顧客情報 | 担当者が顧客の要望や商談の経緯を把握します。 | 担当者に加え、対応や判断に関わる人も顧客の要望や商談の経緯を把握します。 |
| 役割 | 担当者が確認と顧客への対応を中心に担います。 | 誰が何を確認し、誰が顧客に対応するかを関係者で共有します。 |
| 判断基準 | 担当者自身の経験や判断をもとに、次の対応を決めます。 | 提案を進める条件や追加確認が必要な条件を共有し、次の対応を決めます。 |
顧客との窓口を1人に任せても、情報と判断基準を営業マネージャーと共有していれば、組織として営業に取り組めます。反対に、複数人が担当していても、商談の経緯を互いに把握していなければ、対応の前提はそろいません。担当人数と情報の共有範囲を別々に確認することが、違いを理解する手がかりです。
担当者の経験を組織の知識として共有する
担当者の経験を共有する際は、顧客から何を聞き、その回答をもとにどう判断したかを残すことから考えます。キヤノンMJグループさんの組織営業に関する解説では、顧客情報や商談の経緯を担当者だけが把握する状態を「属人営業」と説明し、営業の知識や情報を共有する取り組みを紹介しています。[2]
担当者が築いた顧客との関係や、経験にもとづく判断は、共有の際にも大切に扱います。そのうえで、顧客が実際に伝えた要望と、担当者が経験から推測した内容を分けて記録します。判断の理由まで伝えることで、別の担当者も、何を確認済みで何を確かめる必要があるかを把握できます。
共有する情報は、次の対応に関わる人が必要とする内容に絞って考えます。営業マネージャーが提案を進めるか判断するなら、顧客の要望と未確認の条件を共有し、担当者が替わるなら商談の経緯も伝えます。経験を記録することから、誰がその情報を使い、何を判断するかまでつなげて考える必要があります。
参考:組織営業になるための4つのポイントとは|キヤノンMJグループさん
顧客情報・役割・判断基準のつなげ方
顧客情報を共有する際は、その情報を誰が確認し、何を判断するために使うかまでつなげて考えます。情報を判断の材料、役割を確認と対応の担当、判断基準を提案を進める条件として整理すると、記録と次の対応の関係が明確になります。
顧客情報を次の判断に生かす
顧客情報は、案件を進めるか、追加の確認へ戻るかを判断する材料として整理します。訪問した日や連絡した回数だけでなく、顧客が何を求めていて、提案に必要な条件をどこまで確認できたかを共有することが判断の前提になります。
顧客の要望を確認済みでも、提案の前提となる条件が分からなければ、その部分は追加確認の対象になります。担当者が経験から予想した内容を、顧客が伝えた事実として扱わないことも必要です。何を根拠に判断したかが分かれば、別の人も同じ情報をもとに次の対応を考えられます。
記録する項目を増やすだけでは、次に誰が何をするかまでは決まりません。以下の表は、顧客情報から確認・対応の担当、判断条件へつなぐための整理例です。実際に使う条件は、顧客の要望と自社の提案内容に合わせて考えます。
| 判断に使う顧客情報 | 確認・対応を担う人 | 次の対応を決める条件 |
|---|---|---|
| 顧客が伝えた要望と、確認済みの条件を共有します。 | 顧客担当者が内容を記録し、提案の判断に関わる人と共有します。 | 提案に必要な条件が確認できていれば、具体的な提案内容を検討します。 |
| 提案の前提として、まだ確認できていない情報を示します。 | 顧客への確認を受け持つ担当者を決めます。 | 未確認の情報が提案内容を左右するなら、その情報を確かめてから判断します。 |
| 顧客から新たな回答を得たら、共有記録へ反映します。 | 確認した担当者が回答を残し、判断に関わる人へ伝えます。 | 回答によって前提が変わった場合は、提案を進める条件を見直します。 |
表の各行で、情報と担当と判断条件が対応していることがポイントです。未確認の項目が残っていても、何を誰が確かめるかは共有できます。不明な顧客事情を推測で埋めるのではなく、判断に必要な確認として残すことが、次の対応につながります。
役割と案件を進める条件をそろえる
役割は誰が何を確認し、誰が顧客に対応するかを示し、判断基準は提案を進めるか追加確認へ戻るかの条件を示します。担当者の名前だけでなく、受け持つ確認内容と、その回答を使って判断する相手まで共有することが基本です。
顧客への確認と、提案を進める判断は、同じ人が担う場合も別の人が担う場合もあります。顧客担当者が要望を確かめ、営業マネージャーと提案の前提を確認する場合なら、それぞれが受け持つ仕事を明確にします。部署を増やしたり、顧客との窓口を複数にしたりすることが必須ではありません。
判断基準をそろえるとは、すべての案件に同じ提案や確認項目を当てはめることではありません。顧客ごとに異なる要望を踏まえ、何が確認できれば提案を進めるかを関係者で共有することです。会社の成長段階に合わせた役割分担まで考える場合は、スタートアップで役割と引き継ぎ条件を決める方法で、体制づくりの進め方を確認できます。
商談・営業スキル スタートアップの営業体制の作り方|役割・引き継ぎ・KPIを見直すポイント
売上や活動件数を共有していても、それだけでは個々の案件で何を確かめるべきかは決まりません。数字による状況把握に加え、顧客の回答や商談の経緯を判断材料として扱います。指標を営業活動の改善につなげる管理方法については、営業の数字と行動を結びつけて改善を考える方法で詳しく説明しています。
営業AI・営業DX メトリクスマネジメントとは?営業組織を変える手法と導入ステップ
情報・役割・判断基準のつながりは、担当者が替わる場面でも確かめられます。次の担当者が記録を見て、何が分かっていて、誰に何を確認すればよいかを把握できるかが大切です。続いて、担当者交代を想定した記入例から、確認済みの事実と未確認の情報の残し方を考えます。
担当者交代に備えた組織営業の進め方
担当者が替わる場面の記入例
担当者が替わる際は、顧客が伝えた事実と、担当者が推測している内容を分けて残します。次の担当者が記録を見て、提案の前提として使える情報と、顧客に確かめる必要がある情報を区別するためです。
以下は、担当Aから担当Bへ案件を引き継ぐ場面を想定した架空の記入例です。顧客から費用の見直しと見積比較の希望を聞いた場合でも、予算の上限や承認する人まで確認済みとは限りません。実在企業の事例や製品の出力ではなく、情報と次の対応のつながりを説明するために示します。
| 記録する項目 | 記入例 |
|---|---|
| 顧客が確認済みの事実 | 担当Aが顧客の窓口から、現在の契約費用を見直し、見積を比較したいという希望を聞いています。 |
| 未確認情報 | 予算の上限と、契約変更を承認する人は、顧客に確認できていません。 |
| 次の確認内容 | 顧客の窓口に、見積比較で重視する条件、予算の上限、承認までの手順を確かめます。 |
| 対応担当 | 担当Bが顧客への確認を受け持ち、得られた回答を共有記録に反映します。 |
| 判断を確認する相手 | 担当Bが営業マネージャーと、確認した条件で提案を進めるか、追加確認が必要かを検討します。 |
この例では、費用を見直したいという希望を、提示した見積への同意として扱わないことが大切です。担当Aの見立てを残す場合も、顧客の発言とは分け、その見立ての理由を添えます。担当Bは未確認の情報を推測で補わず、提案を進める判断に必要な回答を顧客に確かめます。
引き継ぎ後の業務の進め方
引き継ぎの記録には、次に確認する内容と、その確認を受け持つ担当者、回答を使って判断する相手を対応させて残します。「予算を確認する」とだけ書くよりも、誰が顧客に尋ね、得られた回答を誰と検討するかまで示すと、担当者交代後の仕事が具体的になります。
先ほどの架空例では、担当Bが顧客の窓口から回答を得た後、営業マネージャーと提案の前提を確認します。必要な条件が確認できていれば、その回答を材料に提案を検討し、未確認の条件が提案内容を左右するなら追加確認へ戻ります。確認する相手や時期が決まっていない場合は、決まったこととして記入せず、担当Bが誰に何を確かめて決めるかを残します。
記録する項目は、すべての企業で同じ書式にそろえる必要はありません。引き継ぐ案件で、次の担当者が確認と判断を進めるために必要な情報を選びます。建設業で見積提出後の対応や関係者への確認を見直す場合は、建設業の案件進捗と見積後の対応を整理する方法で、業務に即した確認内容を確かめられます。
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まとめ:組織営業で情報と判断を共有する基本
自社の情報共有と判断の進め方を振り返る
組織営業の基本は、顧客情報を共有し、誰が確認と対応を担い、どの条件で提案を進めるかをそろえることです。担当者が把握している顧客の要望や商談の経緯を、次の対応を判断する人も確認できる形で残します。
自社の共有記録を振り返る際は、顧客が伝えた事実と担当者の推測を区別できるか、未確認の条件を誰が確かめるか、その回答を誰と検討するかを確認します。担当者が替わる場面でも、次の担当者が記録から確認すべき内容を把握できることが判断の前提になります。
自社の営業組織の状態をさらに考える場合は、営業組織診断で確認する内容も参考になります。
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