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営業の資料作成に絞ったAI活用研修は何から決める?|入力範囲・確認手順・効果測定

営業の資料作成に絞ったAI活用研修は何から決める?|入力範囲・確認手順・効果測定

▼ この記事の内容

営業の資料作成に絞ったAI活用研修は、ツール操作を教える前に、扱う資料の種類、AIに任せる工程と人が判断する工程、演習素材と入力してよい情報、受講者の資料を確認する基準の4点を決めてから組み立てます。資料ごとの分担を1枚にまとめる「設計シート」と、受講者の資料を観点ごとに見る「レビュー基準表」を使えば、研修後の確かめ方まで同じ観点で整理できます。

営業部門から「提案資料づくりに生成AIを使えるようにする研修を組んでほしい」と頼まれても、研修で扱う資料や演習に使う素材はすぐには決まりません。顧客情報や他社の資料をどう扱うか、受講後に資料作成が変わったかをどう確かめるかも、企画の段階で問われます。資料作成に絞ったAI活用研修を任された人事・人材開発担当者は、カリキュラムを組む前にこうした問いで手が止まりがちです。

ツールの操作を教える講座だけで研修を組むと、どこまでAIに任せるか、何を入力するか、どこを人が確かめるかの判断が受講者ごとに分かれます。同じ演習課題を出しても受講者の資料を同じ基準で見直せず、研修後に実務の資料が変わったかも判断しにくくなります。

以下では、ツール操作より先に決める4つの項目から始めます。続いて、資料の種類と工程の分担を1枚にまとめる設計シート、演習素材を架空の内容に置き換える手順を示します。そのあと、個人情報保護委員会と文化庁の公開資料を踏まえた入力ルールと生成物の確認手順、受講者の資料を見るレビュー基準表、外部研修を比較するときの確認項目、研修後の確かめ方を順に扱います。提案書をAIで作る手順そのものは本文中で紹介する関連記事に任せ、ここでは研修として教えるための設計に絞ります。

読み終えるころには、自社で扱う資料を1種類選び、設計シートの最初の1行を埋められる状態になっているはずです。

営業の資料作成研修で最初に決める4つのこと

4つの項目は、研修の日程や講師を決める前に、研修を企画する人事・人材開発担当者が中心になって決めます。項目が決まらないまま操作講座を始めた場合に何が起きるか、担当者だけで決めきれない事項を誰に相談するかも、あわせて確認しておきます。

ツール操作より先に決める4つの項目

営業の資料作成に絞ったAI活用研修では、ツールの操作を教える前に4つを決めます。研修で扱う資料の種類、AIに任せる工程と人が判断する工程、演習に使う素材と入力してよい情報、受講者が作った資料を確認する基準です。

1つ目の「資料の種類」では、営業担当者が実際に作っている資料の中から研修で扱うものを選びます。どの資料を候補にし、どこまで絞るかは、次のセクションで資料ごとの確認範囲とあわせて扱います。

2つ目は工程の分担です。構成案の下書きや文章の言い換えはAIに任せ、数値や事例の根拠の確認、顧客に出すかどうかの判断は人が担う、というように資料ごとに線を引きます。3つ目の演習素材と入力してよい情報では、顧客情報や社外秘の数値を研修中にどう扱うかを決めます。4つ目の確認基準では、受講者の資料を誰がどの観点で見るかを定めます。

4項目をどこまで細かく決めるかは、商材、営業組織の規模、社内で使う生成AIサービスによって変わります。扱う資料が1種類で、受講者が同じ部署に限られるなら、1枚のメモにまとめれば足ります。事業部ごとに提案書の形式が違う場合は、資料の種類と確認基準を事業部ごとに分けて決めておくと、演習の途中で受講者が迷う場面が減ります。

4項目が決まらないまま始めた研修で起きること

4項目を決めずにツールの操作講座から始めると、研修の後で「どこまでAIに任せるか」「何を入力してよいか」の判断が受講者ごとに分かれます。操作の手順は全員に伝わっても、その手順を自分の案件でどう使うかは各自の解釈に任されるためです。

工程の分担が決まっていないと、ある受講者はAIの下書きを見直してから使い、別の受講者は生成された文章をほとんどそのまま提案書に貼ります。同じ演習課題を出しても、受講者が何を身につけたかを同じ基準で比べられません。

入力してよい情報を示していない研修では、受講者が手元の案件資料をそのまま生成AIに貼り付けて演習を進めることがあります。研修で覚えた使い方はそのまま実務に持ち込まれます。後から社内ルールを配っても、使い方を改めてもらうための説明と確認が別に必要になります。

確認基準がないと、受講後に資料作成が変わったかどうかを判断する材料が、受講者アンケートの感想に限られがちです。研修の中で使った観点と、研修後に実務の資料を見る観点を同じにしておけば、どこが変わり、どこが変わっていないかを営業マネージャーと同じ言葉で話し合えます。

生成AIの利用ルールがすでに社内で定められ、営業部門にも浸透している組織では、受講者ごとの差は小さくなります。その場合も、ルールが資料作成のどの工程に当てはまるかを研修の中で確かめておくと、ルールと演習の内容のずれを防げます。

営業・情報システム・法務との事前調整項目

4項目を決める中心は研修を企画する人事・人材開発担当者ですが、担当者だけでは決めきれない事項もあります。関係部署には設計全体を任せず、それぞれに決めてもらう事項だけを絞って依頼すると、すり合わせの回数を抑えられます。

相談する相手決めてもらう事項研修設計で反映する項目
営業マネージャー研修で扱う資料の種類と、顧客に出す前に人が確認する工程資料の種類、工程の分担
営業企画・営業推進担当者演習素材のもとにする資料の形式と、社内の表記ルール演習素材、確認基準
情報システム担当者(必要に応じて)研修で使う生成AIサービスと、そのサービスの利用条件入力してよい情報
法務担当者(必要に応じて)顧客情報や他社の資料を演習でどう扱うか、判断に迷う資料の扱い演習素材、入力してよい情報

情報システム担当者と法務担当者への相談は、すべての研修で必要になるわけではありません。社内で使える生成AIサービスと入力ルールがすでに決まっているなら、その内容を研修に当てはめれば足ります。研修で新しいサービスを使う場合や、実際の案件資料をもとに演習素材を作る場合は、研修の日程を決める前に相談しておきます。

研修の対象を資料作成に絞るかどうかを、まだ営業部門と話し合っている段階なら、営業向け生成AI研修で扱う業務の範囲と選び方を先に確認しておくと、資料作成以外の業務と比べたうえで関係部署へ説明できます。次のセクションでは、4項目のうち資料の種類と工程の分担を具体的に決める方法を扱います。

営業育成・研修 営業向け生成AI研修とは?扱う業務範囲と実運用に定着する選び方

資料の種類とAI・人の役割分担を定義する

研修で扱う資料は、営業担当者がふだん作る資料から選び、資料ごとにAIに任せる工程と人が判断する工程を分けます。分担の線は資料の用途によって変わり、顧客に渡す資料ほど人が確かめる範囲を広くとります。

研修で扱う資料を3種類に絞る

研修で扱う資料は、営業担当者がふだん作っている資料から選びます。候補は、提案書、商談前の顧客調査メモ、商談後のフォロー資料の3種類です。対象を絞ると、演習で作る資料と研修後に確認する資料の種類がそろいます。

AIに任せる範囲と人が確かめる範囲は、資料の種類によって変わります。提案書は顧客に直接渡す資料なので、数値・事例・表現のすべてを社外に出す基準で確認します。商談前の顧客調査メモは社内で使う資料です。ただ、公開情報の要約に誤りがあると、商談で確認する質問がずれます。商談後のフォロー資料では、商談で聞いた内容と合意した事項を正しく書けているかを確かめます。

どの資料から始めるかは、営業組織の仕事の中心で決めます。新規顧客への提案が多い組織なら、提案書を先に扱うと、演習の課題が日常業務に近くなります。既存顧客との取引の継続が中心なら、商談後のフォロー資料から始めるほうが、受講者が研修の翌日から同じ手順を試す機会が多くなります。

3種類すべてを1回の研修に入れる必要はありません。営業部門が見積書の添え状や社内稟議用の資料にもAIを使いたいと考えている場合も、まず受講者が最も多く作る1〜2種類で研修を組みます。そのうえで、残りの資料は研修後に同じ設計で追加します。扱う資料を増やしすぎると、1つの資料について下書きから確認までの演習をひと通り行う時間が足りなくなります。

各工程でAI・人の役割を明確に分ける

資料の種類を決めたら、資料を作る工程ごとに、AIに任せる工程と人が判断する工程を分けます。AIに任せる候補になるのは、手元の情報の整理、資料の構成案づくり、文章の下書きや言い換えです。人が判断するのは、顧客固有の課題の反映、数値・固有名詞・事例の根拠確認、その資料を社外に出してよいかの判断です。

工程分担研修で扱う内容
情報の整理(商談メモや公開情報のまとめ)AIに任せる候補入力してよい情報かを確かめてから依頼する
構成案づくりAIに任せる候補顧客の課題に沿った順番になっているかを人が見直す
文章の下書き・言い換えAIに任せる候補社内の表記ルールに合わせて直す
顧客固有の課題の反映人が判断商談で聞いた内容とずれていないかを確かめる
数値・固有名詞・事例の根拠確認人が判断出典や社内資料と照らし合わせる
社外に出す判断人が判断最終確認を誰が行うかを決めておく

人が判断する工程を演習として研修に入れるのは、AIの下書きを正しいものとして扱うと、誤りがそのまま顧客に届くためです。個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)でも、生成AIサービスの応答結果には不正確な内容が含まれることがあると注意を促しています。[1]研修では、AIの下書きに含まれる数値や事例を、受講者が自分で根拠と照らし合わせる時間を設けます。確認を1回入れても見落としは残りうるため、社外に出す前の最終確認を誰が担うかも決めておきます。

分担の線は資料ごとに引き直します。社内だけで使う顧客調査メモでは、要約と構成案をAIに任せ、数値・固有名詞の正確さ、公開情報との一致、推測と事実の書き分けを人が重点的に確認します。入力ルールの順守も確認し、類似確認と記録の範囲は法務担当者と相談して決めます。顧客に渡す提案書では、これらの確認に加えて、顧客の課題の順に構成案を並べ直す作業を人が担います。

資料作成に絞った研修で、提案書の作り方を一から教える時間まで確保するのは難しくなります。受講者がAIで提案書を作った経験がない場合は、提案書をAIで作る5つの手順を研修前に読んでもらい、研修の時間は工程の分担と確認の演習にあてます。

営業AI・営業DX AIで提案書を作成する方法|実務で使える5手順

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等|個人情報保護委員会

資料作成AI研修の設計シート(ひな型)

資料の種類と工程の分担を決めたら、資料ごとに1行ずつ「資料作成AI研修の設計シート」へまとめます。設計シートは、資料の種類、AIに任せる工程、人が判断する工程、入力してよい情報、受講者の資料を確認する観点を1枚に並べた表です。研修の中身を営業部門や関係部署と共有するときの材料になります。3種類の資料で埋めた記入例を示します。

資料の種類AIに任せる工程人が判断する工程入力してよい情報(社内ルールで確認した範囲)受講者の資料を確認する観点
提案書構成案づくり、文章の下書き・言い換え顧客の課題の反映、数値・事例の根拠確認、社外に出す判断社名・数値を架空に置き換えた演習素材、自社の公開済みの製品説明数値・事例の出典、顧客の課題とのずれ、既存の著作物との類似、社内の表記ルール
商談前の顧客調査メモ公開情報の整理・要約、商談で確認する質問の案情報の正確さの確認、質問の優先順位顧客企業の公開情報(演習では架空の企業に置き換えたもの)公開情報との照合、推測と事実の書き分け
商談後のフォロー資料商談メモの整理、お礼・確認事項の文章の下書き商談で合意した内容の反映、顧客に出す判断人名・連絡先・案件固有の数値を架空に置き換えた商談メモ商談内容とのずれ、約束していない内容の混入、入力ルールの順守

記入は、受講者が最も多く作る資料の行から始めます。「入力してよい情報」の列は、情報システム担当者と確認した社内の利用条件に合わせて書きます。確認が済んでいない欄は空けたまま「確認中」と書いておきます。研修担当者の判断で空欄を埋めると、演習中に受講者から入力してよいかを聞かれたときに根拠を示せません。

列と行は自社の資料に合わせて調整します。提案書の形式が事業部ごとに違う場合は、資料の種類を事業部ごとに分けて行を増やします。研修で使う生成AIサービスが複数あるなら、どのサービスで演習するかの列を足しておくと、入力してよい情報をサービスごとに書き分けられます。社内で使う資料だけを扱う研修では、「社外に出す判断」の代わりに、資料を誰と共有してよいかを人の工程に書きます。

設計シートの右端にある「確認する観点」の列は、受講者が作った資料を見るレビュー基準の元になります。この列が空いたままだと、演習で何を直せばよいかを受講者に示せません。次のセクションでは、「入力してよい情報」の列を埋めるための演習素材の用意の仕方を扱います。

演習素材を架空の内容に置き換える理由と手順

演習素材は実案件を元にしつつ、固有の情報だけを架空の内容に置き換えて作ります。置き換えだけでは案件が特定できる場合もあるため、別の人による確認と、入力してよい情報を受講者に示す一覧までを準備の範囲に含めます。

実案件をそのまま演習に使わない理由

資料作成の演習には、実際の案件資料や顧客情報をそのまま使いません。社名・人名・連絡先・案件固有の数値を架空の内容に置き換えた素材を用意します。演習では受講者が素材を生成AIに入力するため、素材に含まれる情報がそのままプロンプトに入ります。

個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)は、個人情報取扱事業者に対し、個人情報を含むプロンプトを生成AIサービスに入力する場合、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。[1]研修の演習がこの範囲に収まるかどうかは、社内規程と利用するサービスの条件によって変わります。入力ルールの決め方は後のセクションで扱い、演習では架空の素材を基本にします。

営業部門からは「実案件でないと練習にならない」という声が出ることがあります。演習で身につけてほしいのは、AIに下書きを頼む範囲を決める、出てきた数値や事例を根拠と照らし合わせる、顧客の課題に沿って構成を直す、という一連の手順です。社名や数値が架空でも、資料の構成と顧客の課題が実案件に近ければ、同じ手順を練習できます。素材のもとには実案件を選び、固有の情報だけを置き換えると、実務に近い難しさを残したまま演習を組めます。

実案件の情報をどこまで演習で扱えるかは、組織によって違います。社内で使える生成AIサービスの利用条件を情報システム担当者が確認し、顧客情報の入力範囲を社内規程で定めている組織もあります。その場合も、研修用に配る素材は置き換えたものを基本にします。規程で認められた情報を扱う演習は、その範囲を受講者に示してから行います。

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等|個人情報保護委員会

社名・人名などの固有情報を置き換える手順

演習素材は、元にする資料を選び、固有の情報を洗い出して架空の内容に置き換えます。そのあと、別の人が案件を特定できないかを確かめます。置き換える対象は、社名、人名、連絡先、案件固有の数値の4種類です。

  1. 元にする資料を選ぶ:設計シートで決めた資料の種類ごとに、構成と顧客の課題が典型的な資料を1件ずつ選びます。経緯が特殊で社内でよく知られている案件は候補から外します。
  2. 置き換える情報を洗い出す:社名、人名、連絡先、案件固有の数値(見積額、取引量、導入規模など)に印を付けます。本文だけでなく、表の注記、ファイル名、スライドのフッター、画像の中の文字も確認します。
  3. 架空の内容に置き換える:実在する企業名や人名と重ならない名前を使います。数値は資料の中で計算が合うように置き換え、業種や企業規模は演習に必要な範囲で残します。
  4. 別の人が特定できないかを確かめる:元の案件を知らない人と、案件を知る営業マネージャーの両方に読んでもらいます。どの顧客か見当がつく箇所がないかを確認します。

4種類の情報を置き換えても、案件が特定できることがあります。取引先が限られる狭い業界の商材や、導入の経緯・地域・時期が特徴的な案件では、社名を伏せても社内の人には顧客が分かります。手順の4つ目で見当がつくと指摘された素材は、業種・地域・時期も架空の内容に変えるか、元にする資料を選び直します。

置き換えを終えた素材は、研修の前に営業企画・営業推進担当者にも見てもらいます。資料の形式や社内の表記ルールが実務と合っていないと、受講者は演習で直した点を実務の資料に当てはめにくくなります。形式と表記を実務にそろえてから配ります。

元の資料と置き換え後の素材の対応表は、演習素材と分けて保管します。対応表を見られるのは研修の担当者だけにし、受講者に配るのは置き換え後の素材だけにします。対応表が素材と一緒に共有フォルダへ置かれていると、置き換えの手間をかけても、元の案件情報が受講者の目に触れてしまいます。

研修で「入力可能な情報」の範囲を示す

研修の冒頭で、演習中に生成AIへ入力してよい情報、入力しない情報、判断に迷ったときの確認先を1枚の一覧にして受講者に示します。一覧を先に配っておけば、受講者は手元の案件資料を貼り付ける前に、それが入力してよい情報かを確かめられます。一覧の記入例を示します。

区分情報の例研修での扱い
入力してよい情報(社内の利用条件で確認した範囲)研修用に置き換えた演習素材、自社の公開済みの製品説明、架空の企業に置き換えた顧客調査の素材演習で使う
入力しない情報実在する顧客の社名・担当者名・連絡先、案件の見積額や取引条件、社外秘の社内資料演習では使わない
判断に迷う情報社名だけを伏せた実案件のメモ、他社の公開資料の文章や図表入力する前に確認先へ聞く(サービスの利用条件は情報システム担当者、顧客情報や他社資料の扱いは法務担当者)

「入力してよい情報」の欄は、情報システム担当者と確認した社内の利用条件と、設計シートの「入力してよい情報」の列に合わせて書きます。名前を伏せた情報なら何でも入力してよい、という書き方はしません。架空に置き換えた素材でも、特定につながる要素が残っていれば「入力しない情報」の側に入れます。

判断に迷う情報を独立した欄にしておくのは、受講者に入力するか使わないかの二択で自己判断させないためです。確認先を質問の種類ごとに書いておくと、研修の当日に受講者が誰へ聞けばよいかが分かります。研修担当者がその場で答えられない質問は、確認先に回して回答を一覧に書き足します。

この一覧は、受講者が研修後に実務で資料を作るときにも使います。演習用と実務用で別々の一覧を配ると、受講者はどちらの範囲に従えばよいか迷います。実務では演習素材の代わりに実案件の情報を扱うため、社内規程で入力を認めている範囲を一覧に書き足してから、研修の終わりに配り直します。

一覧の中身を決める根拠は、社内の入力ルールと、生成物を顧客に出す前の確認手順です。次のセクションでは、個人情報保護委員会と文化庁の公開資料をもとに、入力ルールと生成物の確認手順を研修にどう組み込むかを扱います。

入力ルール設定と生成物の品質確認プロセス

入力ルールと生成物の確認手順は、公的機関が示す注意点をもとに研修の前に関係部署と決め、演習として受講者に手を動かしてもらいます。個別の案件で入力や生成物の利用が適切かどうかは研修担当者が判断せず、法務担当者や専門家に確認する流れを研修の中で示します。

個人情報保護委員会の注意喚起を踏まえたルール設定

研修の入力ルールは、個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)が求める2つの確認から決めます。1つは、個人情報を含む入力が利用目的の達成に必要な範囲内かです。もう1つは、提供事業者が入力内容を機械学習に利用しないこと等です。[1]どちらも研修の前に確かめます。

同じ注意喚起では、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。[1]企画する側がこの確認を済ませないまま演習を始めると、入力してよいかどうかを受講者が自分で判断することになります。研修で使う生成AIサービスを決めた段階で、次の3点を関係部署と確かめ、その結果を入力ルールとして受講者に示します。

確認すること確認する相手・資料研修で受講者に示す内容
研修で使う生成AIサービスと契約プラン情報システム担当者演習で使うサービス名と、それ以外のサービスを演習で使わないこと
入力内容の扱い(機械学習への利用の有無など)提供事業者の利用規約・サービスの説明、情報システム担当者確認した条件と、その条件のもとで入力してよい情報の範囲
顧客情報の入力が利用目的の範囲内か法務担当者、社内の個人情報の取扱規程顧客情報を入力してよい場面と、入力しない場面

3点のうち確認が終わっていない項目があれば、その項目に関わる情報は「入力しない情報」に置いたまま研修を始めます。前のセクションで作った入力してよい情報の一覧は、この確認結果に合わせて書き換えます。提供事業者の利用規約は改定されることがあるため、確認した日付と確認した人を一覧の欄外に書いておくと、次回の研修で見直す箇所が分かります。

研修の中では、入力ルールを配って読ませるだけで終わらせず、判断に迷う情報を使った確認問題を入れます。社名だけを伏せた商談メモを見せ、入力してよいか、入力しないならどう置き換えるか、迷ったら誰に聞くかを受講者に答えてもらいます。答え合わせでは、表の3点の確認結果に戻って理由を説明します。

個別の案件で顧客情報の入力が利用目的の範囲に収まるか、特定のサービスの条件で足りるかは、研修担当者が決めません。法務担当者や個人情報保護に詳しい専門家に確認し、その回答を入力ルールに反映します。

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等|個人情報保護委員会

文化庁チェックリストで推奨される社内予防策

文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)では、業務で生成AIを使う事業者の取組みとして3つを挙げています。利用するAIサービスの利用規約等を確認して従うこと、従業員等の著作権制度の理解を確認しておくこと、生成AIの利用に関する内部的ルールの策定等の予防措置を講じることです。[2]資料作成に絞った研修では、この3つを1コマにまとめてカリキュラムに入れます。

同ガイダンスが挙げる取組み研修で扱う内容準備する人
利用規約等の確認と順守演習で使うサービスの利用規約のうち、入力内容と生成物の扱いに関わる箇所を受講者と一緒に読む研修担当者、情報システム担当者
著作権制度の理解の確認他社の公開資料の文章・図表や、Web上の画像を資料に取り込む場面を題材に、受講者に扱いを答えてもらう研修担当者、法務担当者
内部的ルールの策定等社内の生成AI利用ルール、入力してよい情報の一覧、生成物の確認手順を受講者に示す研修担当者

3つを講義で説明するだけだと、受講者は資料作成のどの場面に当てはまるのかを結び付けにくくなります。規約の確認では、演習で使うサービスの規約を実際に開き、入力内容と生成物の扱いが書かれた箇所を受講者に探してもらいます。著作権制度の理解では、提案書に競合他社の公開資料の図表を載せたい、Webで見つけた画像を表紙に使いたい、といった営業担当者が迷いやすい場面を題材にします。

生成AIの利用に関する社内ルールがまだ決まっていない場合も、研修のために全社ルールを一から作る必要はありません。研修で使う範囲に限った取り決め(使うサービス、入力してよい情報、生成物の確認手順)を情報システム担当者・法務担当者と合意し、研修資料に載せます。全社ルールが後から決まったら、研修資料をその内容に差し替えます。

このコマで受講者に身につけてもらうのは、予防のための手順と、迷ったときに誰へ回すかの判断です。個別の資料が著作権を侵害するかどうかは受講者や研修担当者が判断せず、法務担当者に確認する流れを研修の中で示しておきます。

参考:AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス|文化庁

生成物の類似性確認とプロンプト記録の演習

生成物の確認手順は、AIの下書きを受け取ってから顧客に出すまでを、受講者が実際に手を動かして行う演習にします。順番は、下書きの作成、数値・固有名詞・事例の根拠確認、既存の著作物との類似確認、生成に使ったプロンプトの記録です。

文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」では、AI生成物を利用する前に、既存の著作物と類似していないかをインターネット上の文章検索・画像検索などで確認することが必要だとしています。あわせて、生成に用いたプロンプト等、生成過程を確認できるようにしておくよう努めることが望ましいとしています。[2]演習では、この2つを根拠確認と組み合わせて次の順で行います。

  1. 下書きを作る:架空に置き換えた演習素材を使い、設計シートでAIに任せると決めた工程だけをAIに依頼します。
  2. 根拠を確かめる:下書きに出てきた数値・固有名詞・事例に印を付け、演習素材や社内資料と照らし合わせます。素材にない数値や事例は、削除するか根拠のある内容に書き換えます。
  3. 類似を確かめる:特徴のある文章や見出し、画像を選び、文章検索・画像検索で既存の著作物と似ていないかを確かめます。似た表現が見つかった箇所は書き直し、判断に迷う箇所は法務担当者への確認に回します。
  4. 記録を残す:使ったサービス、入力したプロンプト、生成した日付、確認した人と確認の結果を記録シートに書きます。

根拠確認を演習に含めるのは、前述のとおり生成AIの下書きには不正確な内容が入ることがあるためです。研修担当者が、素材にない数値をあえて含めた下書きを用意しておき、受講者がそれを見つけられるかを確かめる進め方もあります。確認を一度通しても見落としは残りうるので、社外に出す前の最終確認は設計シートで決めた担当者が行います。

類似確認や記録をどこまで求めるかは、資料の用途によって扱いが異なる場合があります。顧客に渡す提案書と社内で使う顧客調査メモとで確認の範囲をどう分けるかは法務担当者と相談して決め、設計シートの「確認する観点」の列に書きます。社内用の資料だから確認を省いてよい、と受講者に伝えるのは避けます。

記録シートは、研修後に受講者の資料を見直すときの材料にもなります。どのプロンプトからどの下書きが出て、どこを人が直したかが残っていれば、指摘する箇所を具体的に示せます。次のセクションでは、この記録と設計シートの観点をもとに、受講者が作った資料を確認するレビュー基準を扱います。

参考:AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス|文化庁

受講者の資料をレビューする基準と運用方法

受講者がAIで作った資料は、点数ではなく観点ごとの確認結果と直す箇所で返し、観点ごとに確認する人を分けます。研修時間の中で指摘と修正を1往復させておくと、研修後に実務の資料を見るときも同じ基準表を使えます。

資料レビュー基準表の5つの観点(ひな型)

受講者がAIを使って作った資料は、5つの観点で確認します。数値・固有名詞・事例の出典確認、顧客固有の課題の反映、社内の表記ルール、既存の著作物との類似確認、入力ルールの順守です。これらを1枚の表にまとめ、観点ごとに確認することと見落としやすい点を書いたものを、ここでは「資料レビュー基準表」と呼びます。設計シートの「確認する観点」の列を、資料の種類をまたいで使えるようにまとめた表です。記入例を示します。

観点確認することよくある見落とし確認する人(例)
数値・固有名詞・事例の出典確認資料に出てくる数値・社名・製品名・事例の根拠が、演習素材や社内資料のどこにあるか素材にない数値や、実在しそうな事例がAIの下書きからそのまま残っている営業マネージャー、研修担当者
顧客固有の課題の反映演習素材の顧客が抱える課題が、提案内容と構成の順番に反映されているかどの顧客にも当てはまる一般的な課題の説明で終わっている営業マネージャー
社内の表記ルール自社の製品名・サービス名・用語、数字や敬語の書き方が社内ルールに沿っているかAIの言い換えで、自社の正式名称や社内で決めた用語が別の言葉に変わっている研修担当者、営業企画担当者
既存の著作物との類似確認特徴のある文章・見出し・図表・画像を検索で確かめ、その結果が記録されているか文章だけを確かめ、図表や画像の類似を確かめていない研修担当者(判断に迷う資料は法務担当者)
入力ルールの順守記録シートのプロンプトに、入力しないと決めた情報が含まれていないか資料の本文は架空の内容になっているが、プロンプトに元の社名や人名が残っている研修担当者

各観点には点数を付けず、確認した結果と直す箇所を書き込みます。点数だけを返すと、受講者はどの数値の根拠がなかったのか、どの表現を直せばよいのかが分からないまま資料を作り直すことになります。記入欄には「確認済み」「要修正(箇所と理由)」「判断を回す(回す相手)」のいずれかを書く形にしておくと、確認する人が替わっても書き方がそろいます。

観点の重みは資料の用途によって変わります。顧客に渡す提案書では5つすべてを確認します。社内で使う顧客調査メモでは、表記ルールより、公開情報との照合と、推測と事実を書き分けているかを重点的に見ます。社内に既存の資料チェックリストがある場合は、この表の観点をそこへ足す形でも構いません。

入力ルールの順守と類似確認は、完成した資料だけを見ても判断できません。前のセクションで扱った記録シートを資料と一緒に提出してもらい、使ったプロンプトと類似確認の結果を資料と並べて確認します。記録が残っていない資料は、内容に問題が見つからなくても「要修正」として記録を付け直してもらいます。

誰がどの観点を見るかを決める

5つの観点は、1人ですべてを見るより、観点ごとに確認する人を分けます。顧客固有の課題の反映は営業マネージャー、入力ルールの順守と記録は研修担当者、類似確認で判断に迷う資料は法務担当者、という分け方が一例です。観点ごとの重みや確認する人は組織によって異なるため、自社の体制に合わせて決め、基準表の「確認する人」の列に名前を書きます。

顧客固有の課題の反映を営業マネージャーに任せるのは、商談の進め方や顧客の業界を知らないと、課題の捉え方がずれているかを判断しにくいからです。研修担当者がこの観点を見ると、文章として整っているかどうかの確認にとどまりがちです。数値・固有名詞・事例の出典確認も、自社の製品情報や社内資料に詳しい営業マネージャーや営業企画担当者が加わると、根拠のない記述を見つけやすくなります。

入力ルールの順守と記録の確認は、研修の冒頭で入力してよい情報を受講者に示した研修担当者が担います。示したルールと記録シートのプロンプトを照らし合わせるだけなので、営業の実務知識がなくても確認を進められます。反対に、ルールに書いていない情報が入力されていた場合は、受講者を責めるより先に、入力してよい情報の一覧に抜けがなかったかを見直します。

法務担当者には、全員の資料ではなく、判断に迷う資料だけを回します。検索で似た表現が見つかったが書き直すべきか決められない場合や、他社の公開資料の図表を載せたい場合などが該当します。どの状態になったら法務担当者に回すかを研修前に決めて基準表に書いておくと、研修担当者が個別の侵害の有無を自分で判断せずに済みます。

小さな組織では、営業マネージャーが複数の観点を兼ねることもあります。その場合は、観点ごとに資料を読み直す順番を決め、1回の通読で全観点を見ようとしないようにします。確認する人が複数いるときは、研修の前に同じ見本資料を全員で確認し、「要修正」とする水準をすり合わせておくと、受講者によって指摘の厳しさが変わるのを防げます。

演習の中でレビューを1往復させる

レビューは研修後に回さず、研修時間の中で1往復させます。受講者が作った下書きに基準表で指摘を返し、受講者が同じ資料を直すところまでを演習に含めます。指摘を読むだけで研修が終わると、受講者は直し方を試さないまま職場に戻ることになります。

  1. 提出する:受講者が演習素材で資料を作り、記録シートと一緒に提出します。
  2. 指摘する:確認する人が、基準表の観点ごとに「要修正」の箇所と理由を書き込みます。
  3. 直す:受講者が同じ資料を直し、直した箇所に印を付けます。直せなかった箇所には、その理由を書きます。
  4. 見直す:確認する人が、指摘した箇所だけを見直し、残った指摘を受講者に返します。

1往復を研修時間に収めるには、演習で作る資料の範囲を絞ります。提案書を丸ごと作らせるより、顧客の課題の整理と解決策の説明にあたる部分だけを作らせるほうが、指摘と修正に時間を割けます。観点も、設計シートでその資料の重点とした観点を研修中に確認し、残りの観点は研修後の実務資料の確認で見る、と分けて構いません。

確認する人が足りない場合は、受講者同士で基準表を使って資料を見せ合う方法もあります。出典確認や表記ルールは、基準表があれば受講者同士でも指摘できます。顧客固有の課題の反映は商談の知識が要るため、営業マネージャーが確認する観点として残しておきます。

研修の日程上、当日に修正まで終えられない場合は、修正版の提出期限を研修後に設け、指摘した人が見直すところまでを研修の一部として扱います。この基準表は、研修後に受講者が実務で作った資料を確認するときにもそのまま使います。次のセクションでは、外部の研修を利用する場合に、こうした資料作成の演習とレビューがカリキュラムに含まれているかを確かめる項目を扱います。

外部AI研修を比較する際の確認項目

外部の研修を比較するときは、講義の内容より、資料作成の演習、演習素材の用意、入力ルールと著作権の扱い、持ち帰る成果物と研修後の確認方法を確かめます。各社に同じ質問をし、自社で決めた設計シートの内容を演習で扱えるかを判断の軸にします。

資料作成の演習と素材の用意を確認する

外部の研修を比較するときは、まず資料作成の演習がカリキュラムに含まれているかを確認します。生成AIの基本操作やプロンプトの書き方を説明する講義が中心で、受講者が自分の手で資料を作る時間がない研修もあります。提案書や顧客調査メモを実際に作り、その場で指摘を受けて直すところまで含まれているかを、研修の時間配分と合わせて問い合わせます。

次に、演習素材を自社の資料に近い形で用意できるかを確かめます。研修会社が用意した汎用の業種・商材の素材だけで進む場合、受講者は職場に戻ってから自社の商材や顧客に置き換える作業を一人で行うことになります。自社の商材や顧客像に近い架空の素材を持ち込めるか、研修会社が事前に聞き取りをして素材を作るかを聞き、持ち込む場合は前のセクションまでで扱った架空化の手順を誰が担うかも確認しておきます。

この2点は、研修で扱う資料の種類を社内で決めてから確認すると比べやすくなります。資料の種類が決まっていないまま問い合わせると、各社のカリキュラムの幅広さを比べることになり、自社で必要な演習があるかどうかが見えにくくなります。設計シートで重点とした資料を1種類挙げ、その資料を演習で作れるかを各社に同じ聞き方で尋ねます。

入力ルール・著作権の扱いと、持ち帰る成果物を確認する

資料作成の演習がある研修でも、入力してよい情報と著作権の扱いをどこまで扱うかは研修ごとに異なります。演習の前に入力してよい情報を受講者に示すか、生成物の類似確認やプロンプトの記録を演習に含めるかを確認します。研修会社の説明と自社の社内ルールが食い違う場合にどちらに合わせるかも、申し込みの前に決めておきます。問い合わせのときに使える確認項目と質問の例を示します。

確認項目問い合わせのときに聞く質問(例)
資料作成の演習受講者が提案書などの資料を作り、指摘を受けて直す時間はカリキュラムのどこにありますか
演習素材の用意自社の商材や顧客像に近い架空の素材を持ち込めますか。素材の作成を依頼する場合、事前に何を提供しますか
入力してよい情報演習の前に、入力してよい情報と入力しない情報を受講者に示しますか。自社の社内ルールに合わせて変えられますか
著作権の扱い生成物が既存の著作物と似ていないかを確かめる手順や、プロンプトを記録する方法を演習で扱いますか
持ち帰る成果物受講者は研修後、どの資料・記録・確認表を持ち帰りますか
研修後の確認方法受講者が実務で作った資料を研修後にどう確認するか、方法や手順は示されますか

持ち帰る成果物は、研修後に職場で資料作成が変わるかどうかに関わる項目です。受講者が演習で作った資料と記録シート、指摘を受けて直した跡、使った確認表が手元に残る研修なら、職場で同じ手順を繰り返せます。研修後の確認方法が示されていない場合は、自社の資料レビュー基準表を使って確認する前提で申し込み、その旨を研修会社にも伝えておきます。

確認項目の重みは、研修の目的と対象者によって変わります。すでに社内で入力ルールが決まっている組織なら、入力ルールの項目は社内ルールに合わせられるかだけを確認すれば足ります。資料作成以外の業務も含めて研修全体にAIをどう組み込むかを検討している場合は、営業研修全体にAIを組み込む設計の進め方もあわせて確認すると、資料作成の研修をその中のどこに置くかを決めやすくなります。

営業AI・営業DX 営業研修×AI活用|現場に定着する研修設計5ステップと成功事例

研修後の効果測定と現場への定着確認

研修後に確かめる対象は、受講者の感想ではなく、実務で作られた資料とその記録です。満足度のアンケートは研修の進め方の見直しに回し、資料の確認には研修で使ったレビュー基準表をそのまま使います。

受講満足度だけで判断しない

研修後の確認は、受講満足度のアンケートだけで終わらせないようにします。満足度は、受講者が研修の内容や進め方をどう受け止めたかを示しますが、職場で作る提案書や顧客調査メモが変わったかどうかは示しません。「分かりやすかった」「すぐ使えそう」という回答が多くても、実務の資料で出典の確認や入力ルールが守られているかは、資料そのものを見るまで分かりません。

「満足度が高ければ十分ではないか」という声が営業部門や経営層から出ることもあります。その場合は、研修で身に付けてほしかったのが操作の理解ではなく、AIの下書きを人が確かめてから顧客に出す手順だったことを、設計シートの「人が判断する工程」の列を示して説明します。確かめたいのが手順の定着である以上、確認の対象は受講者の感想ではなく、受講者が作った資料と記録になります。

満足度のアンケートは、研修の進め方を直すための材料として使います。演習の時間が足りなかった、素材が自社の商材から遠かった、といった回答は、次回の研修で演習素材や時間配分を見直す手がかりになります。アンケートに「研修後に最初に作る予定の資料」を書く欄を設けておくと、次に扱う実務資料の確認で、どの資料から取り出すかを決めやすくなります。

実務の資料を取り出してレビュー基準表で見直す

研修後は、受講者が実務で作った資料を一定数取り出し、研修で使った資料レビュー基準表で確認します。見るのは、研修中の演習で指摘された点が次の資料で直っているかと、入力ルールに反する使い方がないかの2点です。入力ルールの順守は完成した資料だけでは判断できないため、研修中と同じく記録シートを資料と一緒に出してもらいます。

確認は、研修中に基準表で指摘を返した人が担うと、前の指摘と今回の資料を並べて見られます。演習で「素材にない数値が残っていた」と指摘された受講者なら、実務の資料で数値の根拠が書かれているかを重点的に見ます。同じ指摘が繰り返し出る場合は、受講者個人の問題として扱う前に、入力してよい情報の一覧や設計シートの工程の分け方に抜けがなかったかを見直し、次回の研修内容に反映します。

取り出す資料の件数や確認の間隔は、確認に割ける工数によって組織ごとに異なるため、営業マネージャーと相談して無理なく続けられる範囲で決めます。この確認の結果を研修の指標として継続して追う場合は、研修の指標を決めて運用する手順を参考に、何をいつ誰が記録するかを決めておくと、次の研修の見直しにも使えます。

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まとめ:資料作成のAI活用研修は4つの決めごとから組み立てる

営業の資料作成に絞ったAI活用研修では、ツールの操作を教える前に4点を決めます。扱う資料の種類、AIに任せる工程と人が判断する工程、演習素材と入力してよい情報、受講者の資料を確認する基準です。資料ごとに1行ずつ設計シートへまとめておくと、営業マネージャーや情報システム・法務担当者と研修の中身をすり合わせやすくなります。

演習には実案件をそのまま使いません。社名・人名・連絡先・案件固有の数値を架空の内容に置き換えた素材を用意し、入力してよい情報の一覧を研修の冒頭で示します。入力ルールは、利用目的の範囲と提供事業者の条件を研修前に確かめてから決めます。生成物については、根拠確認・類似確認・プロンプトの記録を受講者に演習として行ってもらいます。個別の案件での入力の適否や著作権侵害の有無は、法務担当者や専門家に確認します。

受講者の資料はレビュー基準表の5つの観点で確認し、研修時間の中で指摘と修正を1往復させます。研修後は満足度のアンケートだけで判断しません。実務で作った資料を同じ基準表で見直し、指摘された点が直っているかと入力ルールが守られているかを確かめます。まずは受講者が最も多く作る資料を1種類選び、設計シートの最初の1行を埋めるところから始めるのがおすすめです。

資料レビューで見る観点を、営業担当者に求めるスキル全体と並べて整理したい場合は、業種別に営業のスキルをまとめたスキルマップのひな型が材料になります。


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この記事を書いた人
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谷本潤哉
元電通、2016年創業。株式会社FAZOM代表取締役。自らの組織崩壊を原点に、営業プロセスを数字で再現する独自メソッド「メトリクスマネジメント」を体系化。累計200社超の営業組織を支援し、売上向上・新人の早期戦力化など成果を創出。