▼ この記事の内容
商談のコツは、準備した説明を話し切ることではなく、相手と確認できた事実に合わせて進め方を決めることです。課題や判断条件が曖昧なら追加で確かめ、確認できた内容に提案を絞ります。判断者が不在なら、双方が次回までに確認すること、担当、時期を相談します。
商談の準備をしていても、相手の課題が曖昧なままでは、何を提案すべきか決められません。判断する人が同席していない場合は、次に誰へ何を確認するかを参加者と相談します。
まず確認するのは、相手と参加者、今回確かめたいことです。
課題と判断条件が分かれば提案を絞り、分からなければ質問に戻ります。
準備から次回の合意まで、各段階で確かめることを整理しました。状況別の確認表を使い、相手と確認できた事実から次の行動を考えられます。
事前準備
商談の準備では、説明資料を増やす前に、誰と何を話し、終了時に何を確認したいかを定めます。分からない情報は事実として扱わず、商談中に確かめる質問にすることが実施条件になります。
事前連絡で相手の事業内容と参加者を確かめる
相手の公開情報や事前連絡を確認し、事業内容、相談のきっかけ、参加予定者を把握します。参加者の役割が分かれば、誰の業務について聞くべきかを考えられます。
公開情報に書かれた事業内容と、今回相談したい仕事は同じとは限りません。事前連絡では、今回扱いたいテーマと参加者の担当範囲を確かめ、詳細は商談で確認します。
複数の部門が参加する場合は、利用する人、運用を管理する人、導入を判断する人が同席するかを見ます。判断者がいなくても商談は進められますが、その場で決められる範囲の確認が実施条件になります。
インプレックスアンドカンパニーの商談解説では、事前準備を商談の基本項目の一つに挙げています。[1]準備の記録には、確認できた情報と、まだ相手に聞いていないことを分けて残します。この区別があると、冒頭から推測を前提にした説明を始めずに済みます。
参考:商談のコツはこの3つだけ|受注できない営業がやりがちなNG行動と改善策|インプレックスアンドカンパニー
未確認の情報は仮説と分け、質問を用意する
商談前に考えた課題は、相手が認めるまで仮説です。「現在はどの手順で進めていますか」と尋ね、実際の仕事の流れから確認します。
「人手が足りないはず」と決めつける代わりに、誰がどの作業を担い、どの場面で時間がかかるかを聞きます。相手の答えが仮説と違えば、用意した提案の見直しが実施条件になります。
質問を大量に並べると、相手にとって尋問のような会話になります。まず今回の相談に関係する質問を選び、答えに応じて追加で聞く内容を変えます。
資料にある数字や事業方針も、現在の担当者が同じ意味で使っているとは限りません。商談中は「事前に拝見した内容について、現在も同じ進め方でしょうか」と確認できます。
今回の商談で決めることを一つに絞る
商談の冒頭では、今回の時間で何を明らかにするかを相手とすり合わせます。初回なら、製品の採否よりも、困っている業務と追加確認の要否を決めるほうが適切な場合もあるためです。
営業担当者が用意した議題だけで進めず、冒頭で次の点を相手と確認します。
- 今日相談したいこと
- 今回の時間で明らかにしたいこと
- 先に話し合いたいこと
双方の優先事項が異なる場合は、説明の順番を変える理由をその場で共有します。
決めることが多すぎると、相手の課題を十分に確かめないまま提案へ進みがちです。今回の終了時に確認したいことを一つ定め、残りは必要に応じて次の確認事項にします。
対面とオンラインで共通するのは、この目的を先に合わせることです。オンラインでの進行に特有の注意点は、オンライン商談で反応を確かめながら進める方法も参考になります。
商談・営業スキル オンライン商談とは?進め方とコツ|失敗改善から商談品質の標準化まで
課題確認
相手が課題を明確な言葉にしていなくても、すぐに提案する必要はありません。現在の進め方、困る場面、その影響を順に聞き、相手の認識と営業担当者の推測を分けます。
課題が曖昧なら、現状と困っていることを聞く
課題が曖昧な商談では、解決策を説明する前に、相手が今どのように仕事を進め、どの場面で困っているかを聞きます。困りごとがまだない場合も、その答えを受け止め、提案の前提を置き直すことが実施条件になります。
「営業活動を改善したい」という相談なら、まず改善したい場面を確認します。新規顧客との初回面談なのか、提案後の社内検討なのかで、確かめる内容が変わります。
答えが抽象的なときに役立つのは、直近の一件を思い出してもらう聞き方です。「そのとき、どなたが何を確認して、次にどう進みましたか」と尋ねれば、実際の手順をたどれます。
相手がすぐに答えられなくても、質問を重ねて結論を急がせません。分からない点を一緒に確認事項として残し、必要なら別の担当者にも確かめてもらいます。オンラインでの質問の進め方には、オンライン商談で確認質問を挟む例もあります。
営業AI・営業DX オンライン商談スクリプトのコツ|例文で学ぶ進め方と改善法
課題の影響と優先度を確かめ、内容を整理する
困りごとが分かったら、どの仕事に影響し、相手がいつまでに変えたいと考えているかが確認事項です。営業担当者が深刻だと思う問題と、相手が優先する問題は一致しないことがあります。
影響は、作業が止まる場面や、誰が追加対応しているかなど、相手が説明できる範囲で聞きます。数字が分からなければ、その場で削減額や改善率を作らず、確認が必要な項目として残すのが適切です。
複数の困りごとが出たら、「今回、先に解決したいのはどれでしょうか」と相手の優先順位を確かめます。優先度の理由まで聞くと、後の提案で何を先に示すべきかが分かります。
聞き取った内容を相手に返す際の形は、「現在はこう進めていて、この場面で困り、先にここを変えたい」です。認識が違えば、その場で直してもらってから提案を考えます。
課題を確認できないときは提案を見送る
課題や変更の必要性を相手と確認できない場合、提案書を先に作っても判断の材料が不足します。提案を急がず、何が分かれば検討できるかを確かめる段階です。
相手が情報収集を始めた段階なら、現在の運用に問題がないという答えもあり得ます。その場合は無理に困りごとを探さず、今回知りたかったことに答えて商談を終えます。
別の担当者でなければ分からない内容は、相手が確認できる範囲と時期について相談が必要です。営業担当者側にも調べることがあれば、双方の担当を明確にしておきます。
追加確認の結果、課題が具体的になれば提案へ進めます。確認しても変更の必要性が見えなければ、提案を見送る判断を相手に伝えることも実施条件になります。
提案
提案は、製品やサービスの説明を網羅する場ではありません。相手が確認した課題と、選ぶときの条件に関係する内容から示します。判断条件が分からない部分は、提案の前に相手へ聞きます。
相手が選ぶときの基準を確かめる
相手が何を満たせば検討を進められるかが、提案前の確認事項です。費用だけでなく、運用する人の負担、導入時期、社内で確認が必要な条件も候補になります。
「何を重視しますか」だけでは相手が答えにくい場合は、現在の方法との違いに焦点を当てて尋ねます。「現在の方法から変えるとしたら、最も気になる点は何ですか」と聞き、相手が比較したい点を確かめます。
参加者によって条件が異なるなら、それぞれの担当業務とともに記録します。利用担当者が求める使い勝手と、管理者が求める運用方法を一つの条件として扱わないためです。
予算や決裁の条件がその場で分からなければ、分かったことにしません。誰が確認できるかを聞き、後で回答を受けるまでは提案の前提として保留します。
確認した課題に関係する提案に絞って伝える
提案では、相手が話した困りごとを最初に確認し、それに対して何を変える案かを示します。関連しない機能や効果を並べるほど、相手が自分の判断条件との関係を確かめにくくなるためです。
説明の順番は、相手の現在の手順、変えたい箇所、提案する方法、導入時に確認する条件とします。相手が示した優先順位と違う順番で話すなら、その理由を添えることが実施条件になります。
提案によって担当者の作業が増える可能性があるなら、その作業も伝えます。導入後に誰が設定や更新を担うか分からないまま、負担が減ると断定しません。
架空の例として、提案後の確認が遅れることが課題なら、資料の機能一覧より、確認事項を誰に渡し、いつ返答を得るかを先に相談します。示す内容は商材と相手の判断条件に合わせて変えます。
判断条件が分からないときは、相手への確認に戻る
課題を聞けても、相手が何を基準に提案を選ぶか不明なら、提案を確定しません。「社内で検討する際、どの点を確認する必要がありますか」と尋ねます。
同席者が判断条件を答えられないこともあります。その場合は、判断する人を推測せず、誰に何を確かめればよいかを相手と整理することが実施条件になります。
回答を待つ間に案を用意するなら、未確認の条件を明記した比較用の案として扱います。予算や運用体制が確定した提案のように見せないことが判断の前提になります。
条件が確認できた後は、相手の課題との対応をもう一度見直す段階です。条件に合わない案は説明を重ねて押すのではなく、案そのものを変えるか、提案を見送ります。
次回合意
その場に判断者がいなければ、参加者だけで結論を出せない場合があります。次回の面談を先に決めるのではなく、判断に必要な情報と、それを誰がいつ確かめるかについての合意が実施条件になります。
判断者が確かめたい条件を聞き取る
判断者が不在のときは、参加者に決裁を迫らず、社内でどのように検討するかを聞きます。判断者の役職を推測するより、確認が必要な条件を具体的にすることが先です。
「社内では、今回の案についてどの点を確認されそうでしょうか」と尋ねます。費用、現場の運用、開始時期など、相手が挙げた内容だけを記録します。
参加者が判断者の考えをまだ知らない場合、その答えを判断者本人の意向として扱いません。本人に確認する事項として残し、営業担当者が用意できる資料があるか相談します。
社内説明が必要なら、参加者が説明しにくい箇所も聞きます。提案の内容が足りないのか、判断条件そのものが未確認なのかによって、次の作業が変わるためです。
双方の確認事項に担当者と時期を割り当てる
商談の終わりには、相手側と営業担当者側で確認することを分けます。「検討します」で終えず、何を確認した結果、次に何を判断するかまで共有します。
架空の記入例では、相手側は運用担当者に現在の手順を確認し、営業担当者側は提案範囲を整理する形です。実際の担当者と時期は、その商談の相手と合意して決めます。
相手が社内確認に必要な時間を答えられなければ、期限を一方的に置きません。いつ頃なら確認の見通しが立つかを聞き、分からない場合は連絡の目安だけを相談します。
確認事項を後で共有する際は、相手の発言と営業担当者の解釈を混ぜないようにします。食い違いがあれば、次の提案を作る前に修正が実施条件になります。
次回の面談は相手の同意を得て日程を調整する
次回の面談が必要かどうかは、残った確認事項を踏まえて相手と決めます。日程の候補を示すことと、相手が面談に同意すること、予約が確定することは別です。
確認事項がメールで解決するなら、面談を増やす必要はありません。一方、複数の担当者と提案条件を話し合う必要があれば、面談の目的と参加者を相談します。
面談を設定する場合は、話し合う内容に必要な時間を確保します。候補を選んでもらっただけでは予約確定と扱わず、参加者と日時の合意を確認する段階です。
次回が決まらなくても、今回確認できたことと未確認のことは残せます。その記録を基に、相手からの回答後に提案するか、追加の確認に戻るかを判断する段階です。
実行支援
商談中の発言を記録するだけでは、次に何をするか決めにくい場合があります。以下は、確認できた事実と未確認事項から進め方を選ぶための編集上の提案です。商材や相手の購買手順に合わせて項目を調整します。
確認できた事実と未確認の点を分けて記録する
記録するときは、相手が話した事実と営業担当者の仮説を別にします。「課題があるはず」という推測を、相手が困っていると認めた事実として残さないためです。
たとえば、相手が「提案後の確認に時間がかかる」と話したなら、その発言と、遅れる理由についての仮説を分けます。理由をまだ聞いていなければ未確認と記します。
数字を聞けなかった場合も、空欄を推定値で埋めません。誰がその数字を確認できるかを聞き、提案の判断に本当に必要な項目だけを残します。
商談後に記録を見返すときは、相手の発言が変化した箇所も確認します。最初の仮説を守るためではなく、今回分かったことに合わせて次の行動を選ぶためです。
状況を見て、提案するか追加で確認するか決める
提案へ進むか迷うときは、課題、優先度、判断条件について相手と何を確認できたかを見ます。足りない条件が提案の内容を変えるなら、先に追加で聞きます。
以下の表は、商談の段階ごとに確認と次の行動を結び付ける記入例です。記載した状況は架空であり、すべての商談に同じ順番や判断を求めるものではありません。
| 段階 | 確認した事実・相手の発言 | 営業担当者の仮説(未確認) | 未確認のこと | 進め方を変える条件 | 次の行動 | 担当・時期 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 準備 | 参加者の担当業務 | 参加者ごとに相談したい範囲が異なるかもしれない | 今回相談したい範囲 | 参加者の役割が違う | 冒頭で目的をすり合わせる | 営業担当者・商談冒頭 |
| 課題確認 | 現在の仕事の手順 | 確認の待ち時間が困りごとかもしれない | 困る場面と優先度 | 課題が曖昧なまま | 直近の具体例を聞く | 双方・商談中 |
| 提案 | 相手が優先する課題 | 運用担当者の負担を重視するかもしれない | 社内の判断条件 | 条件によって案が変わる | 判断条件を確認してから案を絞る | 双方・提案前 |
| 次回合意 | 残った確認事項 | 別部門への確認が必要かもしれない | 回答できる担当者と時期 | 判断者が不在 | 確認先と連絡方法を相談する | 合意した担当者・合意した時期 |
表の項目が埋まっても、相手の同意がない行動を予定として確定しません。特に判断者が不在なら、社内確認の結果を待って提案内容を変える余地を残します。
次の行動と担当者、実施時期を記録する
商談後に必要なのは、きれいな議事録より、誰が何をいつ確認するか分かる記録です。相手の担当と営業担当者の担当を分けて残します。
確認事項には、その答えを次の何に使うかも添えます。たとえば運用担当者の負担を確認するなら、その結果を提案範囲の調整に使うと明記することが実施条件になります。
予定した時期までに回答が難しくなった場合は、確認事項と次の連絡時期を調整します。回答前に提案や面談を確定したことにはしません。
同じ場面で何度も確認が漏れるなら、その項目を次の商談準備や練習にも使えます。商談で確認する行動を練習する方法は、実際の商談で直したい場面が見えた後に参考になります。
商談・営業スキル 営業ロープレのコツ|実商談と同じ基準でつなぐ練習設計と評価の作り方
まとめ|確認できた事実をもとに次の行動を決める
商談では、相手の事業内容と参加者を事前に確認し、当日は聞き取った課題と優先度をもとに提案を絞ります。判断条件が分からなければ確認に戻り、判断者が不在なら、双方が何をいつまでに確かめるかを相談します。
確認表には、相手が話したこと、まだ分からないこと、次の行動を分けて残します。確認した結果に応じて、提案へ進むか、追加で聞くか、提案を見送るかを決めることが必要です。次回の面談が必要な場合も、相手の同意を得てから日程を調整します。
次の商談に備える際は、確認表を使って、まだ相手に確かめていない項目を整理します。その中から、答えによって提案内容が変わる項目を選び、商談で聞く質問を用意してください。