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RAGは、同じ資料と質問で、回答の根拠、資料の更新、閲覧権限、回答を保留する条件、運用費用を比較します。旧版の取得と取得後の誤回答を分け、権限外の情報や根拠のない回答が出ないかも確かめます。未確認の条件と次に確認する担当を残して採否を判断します。
RAGの導入担当者が比較したいのは、仕組みの名称よりも、自社の資料でどの質問に答え、どの条件で答えないかです。資料の更新、閲覧権限、根拠の確認、運用担当をそろえずに候補を試すと、結果の差を説明しにくくなります。
この記事では、通常の検索型RAG、GraphRAG、FAQやチャットの役割を、優劣ではなく確認する仕事で分けます。特定製品の性能や導入効果は比較せず、説明のための架空規程を使って、比較票をどう記入するかを示します。
RAGを比較する前にそろえる条件
用途・資料・利用者・根拠・回答保留を同じ比較表にまとめる
RAGを比較する時は、用途、対象資料、利用者、期待する根拠、回答を保留する条件を先にそろえます。方式ごとに質問や資料が異なると、回答の違いが検索方式によるものか、入力条件によるものかを分けられません。
比較票には、質問、使える資料、利用者の権限、期待する根拠、資料に答えがない時の対応を並べます。
FAQやチャットとRAGは両立できる
FAQは整理された質問と回答、チャットは利用者との入口、RAGは検索した資料を回答生成へ渡す考え方として役割を分けて考えます。同じサービスが複数の役割を持つこともあるため、名称だけで候補を外しません。
対象文書の準備や検索の流れを確認する必要があれば、RAGを構築する手順を参照し、比較票の資料欄と質問欄を具体化します。比較票には自社で使う文書と質問を記入し、候補ごとの対応範囲は提供元に確認した内容、回答の品質はその資料で試した結果を記録します。
検索と回答生成の方式を比較する
Microsoft GraphRAGの公式説明は対象の実装に限って読む
Microsoft GraphRAGの公式ドキュメントでは、非構造化テキストから知識グラフとコミュニティ要約を作成し、Global、Local、DRIFT、Basicの検索方式を案内しています。これはMicrosoft GraphRAGの公開説明であり、すべてのGraphRAG実装の機能や性能を示すものではありません。
グラフ構築や要約が必要かは、文書集合全体の傾向を問う質問があるか、更新や再処理を誰が担うかを含めて試験します。通常の検索型RAGより常に高精度または低コストだとは、この説明から判断できません。
参考:Microsoft GraphRAG documentation|Microsoft
AzureのClassic RAGとAgentic retrievalの違い
Microsoft LearnのAzure AI Search概要では、Classic RAGをアプリケーション側で検索とLLMへの受け渡しを実装するパターン、Agentic retrievalをLLMのクエリ計画と複数検索を使うパターンとして説明しています。Azure以外の構成、料金、権限、速度、精度へ一般化しません。
検索対象の文章をどう分けるかは方式名とは別に確認します。検索対象の文章を分割する方法を参照し、規程の例外条件や表の見出しが検索時に欠けないかを試験票へ書きます。
参考:RAG and Generative AI – Azure AI Search|Microsoft Learn
次の表は、公式資料で説明される構成と、試行時の確認項目を対応付けたものです。Azureの製品機能とMicrosoft GraphRAGの実装を同じ製品分類として並べたランキングではありません。各行の試す質問は比較方法の提案です。
| 公式資料の対象 | 仕組みの範囲 | 試す質問の例 | 準備・運用の確認 | 採否判断の前提 |
|---|---|---|---|---|
| AzureのClassic RAG | アプリ側で検索によって取得した資料をLLMへ渡す。 | 新規程の上限など、根拠箇所を特定する質問。 | 検索設定・文書分割・根拠の受渡しを確認。 | 同じ質問で正答と根拠を照合。GA機能だけが必要な場合に公式概要が示す選択肢。 |
| AzureのAgentic retrieval | LLMによるクエリ計画と複数検索。 | 旧新規程を横断する質問など。 | 検索計画・取得結果・使用量・提供条件を確認。 | 全機能がGAとは扱わず、対象機能と環境を確認して同じ質問で試す。 |
| Microsoft GraphRAG | グラフ・コミュニティ要約を作り、Global/Local/DRIFT/Basic等で検索。 | 資料集合全体の傾向や、特定の対象を尋ねる質問。 | 抽出・要約・再処理と検索方法を確認。 | Global等の使い分けを検証。グラフがあれば正答率が上がるとはしない。 |
同じ架空資料を使ったRAG比較表の記入例
架空の出張規程で回答・根拠・回答保留を記録する
以下は説明のための架空例です。実企業の規程、法令、実製品の出力、精度検証ではありません。旧規程では宿泊上限を1万円、新規程では1万2千円とし、営業部だけの例外承認メモは他部署が閲覧できず、海外出張条件は資料にないものとします。
次の観察記録と応答も説明用に作った架空例で、実製品による試験結果ではありません。旧規程は2025年、新規程は2026年という想定です。金額は架空規程の記入例であり、実際の宿泊上限や経費制度の根拠には使いません。
| 質問・利用者 | 期待する根拠と応答 | 架空の観察記録 | 原因の切り分けと次の担当 |
|---|---|---|---|
| 新規程の宿泊上限/一般社員 | 2026年規程の該当箇所に基づき1万2千円と回答。 | 架空応答は旧版を引用し1万円と回答した。 | 旧版だけを取得していた。更新担当が索引反映を確認し再試験。 |
| 旧新規程の違い/一般社員 | 両規程を引用し、1万円から1万2千円への変更と説明。 | 両規程を取得したが、架空応答は「変更なし」とした。 | 根拠取得後の生成誤り。評価担当が回答と根拠の差を記録。 |
| 営業部の例外/他部署社員 | 権限外資料の内容を返さず、適切な問い合わせ先を案内。 | 架空応答に営業部限定メモの内容が出た。 | 権限に関する重大な失敗。情報システム担当が閲覧者と検索対象を見直す。 |
| 海外出張の上限/一般社員 | 根拠がないため金額を断定せず経理への確認を案内。 | 架空応答は「資料では確認できません。経理へ確認してください」と返した。 | 説明例では適切に保留。実環境でも同じ条件で再確認する。 |
記録は性能評価ではなく次の確認事項を決める材料にする
架空例では、同じ誤回答でも旧版の取得と取得後の誤生成を区別しています。実際の試験票にも観察した結果を残し、次に確認する条件を書きます。たとえば旧版が混じったなら更新の反映を、権限外の例外が表示されたなら利用者別の検索を、根拠がないのに答えたなら回答保留の設計を確認します。
固定FAQで足りる範囲も比較対象になります。社内FAQの比較方法を確認し、定型質問と資料を横断する質問を同じ候補比較に混ぜないようにします。
更新・権限・回答保留を検証する
旧版の参照・権限外の参照・根拠の欠如を分けて記録する
更新前の資料が残る問題、権限のない資料が見える問題、資料があるのに検索で見つからない問題、取得した根拠を超えて回答する問題は、同じ失敗ではありません。原因が異なれば、確認する担当と次に試す変更も異なります。
試験では、資料を更新した質問、削除した質問、異動後の利用者での質問、資料に答えがない質問を用意します。権限設定や確認者があれば誤回答や漏えいを防げる、と保証するのではなく、実際の対象資料と利用者で結果を確認します。
適切な回答保留と回答できないケース全体を区別して評価する
回答保留を評価する時は、根拠なしや権限外で保留すべき質問を分母にします。全質問に対する未回答の割合だけでは、保留が必要な質問を適切に扱えたか、答えるべき質問を見落としたかを区別できません。
問い合わせの入口や引き継ぎも含めて比較する場合は、問い合わせ対応システムの比較方法を参照し、回答する範囲と人へ渡す範囲を別欄にします。
導入から継続運用までの費用と担当を比較する
初期構築・更新・確認の担当を表にまとめる
比較する費用には、モデル利用量だけでなく、資料の整備、索引やグラフの作成、更新後の再処理、権限の同期、回答の確認、監視、退出時の取り扱いを含めます。どこまでが候補の料金に含まれるか、どこから社内作業かは候補ごとに確認します。
担当欄には、資料を更新する人、承認する人、権限を見直す人、代表質問を再試験する人を置きます。担当が未確認なら、作業がないと扱わず、契約前の確認事項として残します。
未確認の費用や条件をゼロとして扱わない
比較表で価格や工数が未確認の場合、推定値で順位付けしません。対象資料、利用者、更新頻度、必要な連携、保持期間、サポート範囲を同じ期間で並べ、確認できた項目と未確認の項目を分けます。
GraphRAGやAgentic retrievalという名称だけから総費用を断定することも避けます。実際のデータ量、再処理の条件、提供地域、契約、設定範囲を確認してから、候補別の費用を比較します。
| 段階 | 確認する作業・費用 | 確認担当・確認先 |
|---|---|---|
| 初期 | 対象資料の整理、索引やグラフの作成、アクセス設定。 | 文書管理者・実装担当が対象と作業範囲を確認。 |
| 更新・継続 | 変更・削除の反映、再処理、モデル利用、保存・監視。 | 運用担当が変更頻度と計測量、提供元が見積条件を確認。 |
| 品質確認 | 新旧・権限外・根拠なしの再試験、原文との照合。 | 業務部門と情報システム担当が確認工数を記録。 |
| 切替・終了 | 文書・評価記録の出力、索引や保存データの扱い。 | 契約担当と運用担当が出力範囲・終了条件を確認。 |
試験結果から採否を決める方法
重要な質問ごとに採用と再試験の条件を決める
採否は質問の件数だけで決めず、業務上重要な質問と失敗の種類ごとに条件を置きます。たとえば規程の最新版、権限外の例外、根拠がない海外条件について、期待する応答、確認者、再試験の条件を先に書きます。
資料の範囲、質問、利用者、確認時点が変われば結果も別に記録します。一度の試験で確認できた範囲を、すべての資料や部署へ拡張できる根拠にはしません。
確認済み・要再試験・要契約確認を分けて記録する
試験票の結論は、確認済み、要再試験、契約や提供条件の確認が必要、のように分けます。未確認の項目を不採用の証拠にすることも、確認済みとして扱うことも避けます。
この区分は製品の順位表ではありません。候補ごとに次の確認を選び、資料、権限、回答保留、運用担当の条件が揃うかを判断するための記録です。
まとめ
比較条件をそろえて試し、次の確認事項を決める
RAGの比較では、通常の検索型、GraphRAG、FAQやチャットを固定的な優劣で並べず、用途、資料、根拠、更新、権限、回答保留、費用を同じ条件で確認します。公式の説明は対象実装の範囲で読み、性能や導入効果へ広げません。
架空の記入例を自社の資料と質問へ置き換え、確認済みの条件と要再試験の条件を分けて残してください。未確認の費用や提供条件を推測で埋めず、誰が何を確認するかを決めてから採否を判断します。