RAGは、質問に関連する資料を検索し、その記述を生成AIの回答材料に加える仕組みです。AIの返答を読むときは、答えだけでなく、どの資料のどの記述が使われたかも確かめます。
▼ この記事の内容
RAGの役割、資料を準備して回答する流れ、回答と参照資料を照合する方法、チャットボットとの関係を順に確認します。
この記事では、RAGと生成AIの役割を分け、架空の研修資料を使って質問、参照資料、回答候補を照合します。製品比較や導入の採否ではなく、社内資料が回答へ入る流れを理解するための基礎説明です。
RAGとは検索資料をAIの回答に活用する仕組み
RAGは、質問に関係する外部の資料を探し、見つけた内容を生成AIへ渡して回答を作る仕組みです。ここでいう外部の資料には、モデルが学習した知識の外にある社内文書も含まれます。
AI・生成AI・RAGの役割の違い
生成AIは文章を作り、RAGは回答に使う資料を探して渡します。RAGは独立した製品名ではなく、生成AIやチャットボットと組み合わせられる処理です。
| 用語 | 担うもの | この例での位置 |
|---|---|---|
| AI | 幅広い技術領域 | 全体 |
| 生成AI | 文章や回答文を作る | 回答を作る場面 |
| RAG | 検索情報を回答材料へ加える | 検索と生成の接続 |
| チャットボット | 質問と回答を表示する | 会話の入口 |
AWSのRAG概説では、学習データの外側にある知識ベースを参照しながら回答を生成する手順として説明されています。質問、検索、関連箇所、生成、回答という順に置くと、資料が回答へ加わる位置を追えます。
参考:What is Retrieval-Augmented Generation?|AWS
資料の参照とモデル学習の違い
回答時に資料を追加することと、モデルのパラメータを更新することは別の工程です。資料を添付して答えを作る場面を、モデルがその資料を恒久的に覚えた場面と同じにしないよう区別します。
Lewisらの2020年の研究は、事前学習済みのパラメトリック記憶と検索した非パラメトリック記憶を組み合わせたRAGモデルを扱います。この研究にはfine-tuningも含まれるため、すべてのRAGが学習を伴わないとは言えません。
実際の仕組みでは、資料の参照と追加学習が併用される場合もあります。まずは、いまの回答がどの資料を材料にしたのかを確認できるかに注目すると、両者を混同せずに済みます。
参考:Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks|arXiv
質問から回答までの流れを資料例で解説
資料を検索できる状態に準備する工程と、質問が来てから関連箇所を探す工程は別です。回答の確認では、この二つを分けて見ます。
資料の準備と質問への回答の工程
Amazon BedrockのKnowledge Basesの説明では、非構造化文書を分割し、埋め込みと元資料の対応を持たせて検索可能にする例が示されています。質問時には関連するchunkを取得し、質問とともにモデルへ渡して回答を作ります。
これはAmazon Bedrockが示す一例であり、特定のデータベースや方式がすべてのRAGで必須という意味ではありません。準備工程を、回答ごとに全資料を学習する処理として扱わないことが、仕組みを読む最初の確認になります。
処理構成や検索方式をもう少し技術的に確認したい場合は、LLMとRAGを組み合わせる処理の流れを参照してください。
営業AI・営業DX LLMとRAGとは?社内AIの仕組みと失敗しないための確認・判断軸
参考:How knowledge bases work|Amazon Bedrock
検索結果の記述と回答内容を照合する方法
以下は架空の資料と質問を使った例です。質問は「社内セミナーはいつまでに申し込めますか。申込後の変更はできますか」とします。
| 文書 | 版・適用条件 | 記述 | 今回の扱い |
|---|---|---|---|
| 社内セミナー申込手順 | 2026年9月版・社内開催分 | 申込は開催日の3営業日前まで。変更は研修担当へ連絡。 | 参照する |
| 社内セミナー申込手順 | 2026年4月版・旧版 | 申込は5営業日前まで。 | 今回の案内には使わない |
| 社外研修の費用規程 | 2026年9月版・社外有料研修 | 費用申請は上長確認。 | 質問対象が異なる |
| 回答候補の文 | 対応する参照記述 | 確認 |
|---|---|---|
| 申込は開催日の3営業日前までです。 | 9月版の期限 | 一致 |
| 申込後の変更は研修担当へ連絡してください。 | 9月版の変更窓口 | 一致 |
| 当日でも空席があれば変更できます。 | 該当する記述なし | 追加しない |
3営業日、5営業日、研修担当は説明用の架空条件であり、実在する会社の規程や製品の出力結果ではありません。このように回答を一文ずつ資料の記述へ戻すと、答えに足された内容を見つけられます。
引用がある回答でも内容確認が必要な理由
検索で必要な資料を取得できたかと、回答が資料に沿っているかは別に確認します。引用や参照元の表示だけで、回答の内容が正しいとは限りません。
誤った資料の検索と読み違いの見分け方
引用や参照元の表示があっても、確認したいのは「どの資料を取得したか」と「その記述を回答が正しく使っているか」です。次の表では、同じ教材で起こり得る4つの状態を分けます。
| 状態 | 確認するもの | この教材での見分け方 | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| 旧版を取得 | 参照文書の版 | 4月版の5営業日を案内 | 9月版への更新と索引反映を担当へ確認 |
| 条件が回答から落ちた | 回答と原文 | 3営業日前が3日前になる | 営業日の条件を残す |
| 必要な記述がない | 引用箇所 | 当日変更可否の記述がない | 確定できない旨と確認先を案内 |
| 権限で取得できない | 利用者と資料のアクセス範囲 | 参照不可 | 権限を無断変更せず担当へ相談 |
資料が見つからないことは、制度や回答が存在しないことの証明ではありません。RAGが引用を必ず表示する、誤りを完全に防ぐ、資料登録後すぐに最新版へ切り替わる、といった保証もこの例からは導けません。
日付・対象者・例外条件の確認方法
回答を読む順番は、参照資料の版、質問の対象者、回答に残った期限や例外、判断に必要な記述の有無です。教材の例なら、9月版、社内開催、3営業日前、変更窓口を一緒に読みます。
元資料を更新しても、検索用の索引へ反映されるタイミングは別に管理されることがあります。更新間隔を製品一般の仕様として決めつけず、使う仕組みの資料更新方法と確認窓口を確認してください。
RAGとチャットボットを組み合わせる方法
チャットボットの裏側でRAGを使うことはありますが、二つは同じ意味ではありません。会話の入口と、回答材料を探す処理を分けて考えると役割が整理できます。
会話の入口と回答材料を探す処理の違い
チャットボットは利用者の質問を受け取り、返答を表示する入口になれます。RAGは、その返答を作る前に資料を探す処理として組み込まれることがあります。
FAQを材料にしたRAGもあるため、FAQ、チャットボット、RAGは排他的な三つの方式ではありません。小さな定型案内に必ずRAGが必要とは限らず、質問の種類と根拠確認の必要性で役割を分けます。
社内資料を使う際の参照元と回答の確認
社内資料を扱うなら、AIの返答だけでなく、参照資料の版、質問の対象、期限、例外、確認先を並べて確認します。架空教材では、9月版・社内開催・3営業日前・変更窓口まで読めることが確認の単位です。
参照元の表示、権限、更新、回答できない質問の扱いを業務で確認したい場合は、生成AIへ社内資料を参照させるときの確認点を参照してください。
営業AI・営業DX 生成AIでRAGを運用するには?社内資料の更新・検索・回答確認の進め方
まとめ
RAGは、検索した資料を生成AIの回答材料に加える仕組みです。資料の参照とモデルの学習を分け、質問が来たときにどの資料のどの記述が使われたかを確認します。
引用が付いた回答でも、資料の版、対象者、期限、例外、記述がない部分を読み合わせます。回答候補を一文ずつ参照資料へ戻す方法なら、もっともらしい追加や条件の抜けを見つけやすくなります。