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CRM導入の進め方|準備・データ移行から現場定着までの手順と完了条件

CRM導入の進め方|準備・データ移行から現場定着までの手順と完了条件

▼ この記事の内容

CRM導入は、目的・要件・担当体制を決め、費用と期間の条件を整理してから、データ移行・試行・本番運用へ進めます。各工程の担当者と完了条件をそろえ、入力した情報が営業の判断に使われるかまで確認することが、導入計画の要点です。

CRM導入は、解決したい営業課題と対象業務を決めるところから始めます。製品選定に進む前に、必要な情報と担当体制を整理し、移行・試行・本番切替で何を確認するかを決めましょう。

導入を任されると、見積の取得、顧客データの整理、現場への説明など、着手すべき作業が重なります。工程ごとに担当者・成果物・完了条件をそろえれば、関係者へ確認する内容と、次へ進む前に解決する課題を整理できます。

この記事で扱うのは、準備からデータ移行、試行、現場定着までの手順と、各工程で使う確認表です。費用と期間を左右する条件、本番切替の判断、入力した情報を営業会議で使う方法まで、自社の導入計画に照らして確認してください。

CRM導入は何から始める?目的と対象業務を決める

CRM導入の準備は、今の管理方法で困っている業務と、今回解決したい課題を決めるところから始めます。既存の台帳や運用の見直しで対応できるかも確認し、導入対象とする業務を関係者で合意しましょう。

中小機構J-Net21のCRM導入の進め方と注意点の解説でも、導入の必要性、社内での目的共有、蓄積した情報の活用を確認するよう勧めています。自社では、解決したい課題と現在の管理方法で対応できない点を整理しましょう。

CRMに登録する項目は、営業担当者や管理職が何を判断するために使うかを起点に選びます。「顧客情報を一元化する」という目的を、担当変更時に対応履歴を確認する、営業会議で次回の行動を決める、といった業務の場面まで具体化してください。

参考:CRMの導入についてその進め方と注意点などを教えてください。|J-Net21

CRM導入の全体手順と社内の役割分担

CRM導入の計画では、製品を契約する日だけでなく、移行した情報を現場で使い始めるまでの作業を決めます。最初に導入の順番を押さえ、各工程で誰が何を確認すれば次へ進めるかを整理しましょう。

CRM導入を進める順番を確認する

CRM導入は、目的・要件・担当体制を決め、費用と選定条件を整理してから、設定・データ移行・試行・本番切替へ進めます。稼働後の確認対象は、情報が更新され、営業判断に使われているかまでです。

SalesforceのCRM導入ガイドでは、ニーズの確認、選定、設定・移行、テスト、利用者の教育、本稼働後の評価という工程が紹介されています。本記事の工程表は、自社の担当者と完了条件を整理するための編集提案です。

先に製品だけを決めると、使いたい業務に必要な情報や、入力を担う部署の合意が後回しになります。OracleのCRM導入ガイドでも、目標設定、必要な機能の整理、IT部門との協働、利用者の参加が推奨されています。導入担当者だけで準備を終えず、営業管理職と情報システム部門に確認する時間を計画へ含めましょう。

すべての作業を一つずつ終えてから次へ進む必要はありません。対象業務を相談している間に、既存の顧客台帳の所在や管理担当者を洗い出す作業は並行して進められます。一方、移行先の項目が決まる前に変換方法を確定したり、試行結果を確認せず本番へ切り替えたりするのは避けるべき進め方です。

導入希望日が先に決まっている場合は、その日までに必要な確認が終わるかを逆算します。間に合わない作業があれば、対象部署や移行範囲を絞るか、日程を見直すかを関係者で判断してください。試行で入力から情報の利用までを確かめる時間を残し、未解決事項を抱えたまま切り替えないことが判断の前提です。

参考:CRMの導入に関するベストプラクティス・ガイド|Oracle

参考:CRM導入完全ガイド:基本の9ステップ|Salesforce

工程ごとの担当者と完了条件を明確にする

工程表には、作業を進める主担当、確認に使う成果物、次へ進むための条件をセットで記入します。「要件表を作った」「データを移した」という作業報告だけで完了にせず、その内容で業務を進めてよいかを判断する担当者も決めておきます。

以下は、自社の導入計画を整理するための編集上の提案です。役職名は分担の例なので、実際に担当する人の氏名へ置き換えて使ってください。少人数の組織では兼任しても構いませんが、営業側が確認する業務上の条件と、情報システム部門が確認する技術上の条件は分けて残します。

工程主担当の例成果物次工程へ進む条件の例
目的整理営業企画対象業務一覧営業管理職と、解決したい課題・今回扱う業務を合意します。
要件と体制営業企画・情報システム部門要件表・役割分担表完了条件は、営業管理職との必須要件の確認と、入力・運用・技術確認の担当者の決定です。
予算と選定営業企画・決裁者見積範囲表・選定記録決裁者が対象範囲と費用を承認し、未見積の作業の扱いを決めます。
移行設計情報システム部門・営業企画移行仕様・照合手順移す項目、重複の扱い、切替までの更新方法、問題時の戻し方を双方で確認します。
試行と切替営業管理職・情報システム部門試行記録・切替判断記録実務で使う入力・閲覧を試し、重大な欠損や必要業務の停止がないことを確認したうえで、切替責任者の判断が必要です。
定着評価営業管理職・営業企画利用状況・評価の記録更新状況と営業会議での利用を確かめ、残る課題の対応担当と見直し時期を決めます。

移行工程なら、データ件数の照合結果に加え、担当者が必要な顧客情報を閲覧できるかも確認対象です。件数が合っていても必要な履歴が抜けている場合は、移行完了とは判断しません。確認する対象と許容する差異は、自社の業務要件に合わせて移行前に決めておきます。

未決事項が見つかったら、その工程に確認担当者と回答期限を追記します。次の作業に影響する問題は解消してから進み、後で対応する項目は理由と対応日を残してください。まずは対象業務一覧を営業管理職と確認し、その業務に必要なデータと担当体制を要件表へ落とし込みましょう。

決裁・運用・入力それぞれの責任者を決める

担当体制は、範囲と予算を承認する人、日々の運用を管理する人、情報を入力する人を分けて決めます。営業企画が導入全体を進める場合でも、業務上の判断や技術的な確認まで一人で引き受けず、要件ごとに確認先と承認者を明記しましょう。

役割分担の例として、営業企画は要件と日程を取りまとめ、営業管理職は会議や引継ぎで使う情報を決めます。現場代表の役割は実際の入力と閲覧の試行で、情報システム部門の役割は既存システムとの連携や権限の確認です。決裁者には、対象業務と予算に加え、今回見送る要件も承認してもらいます。

入力の責任は、「営業部が担当する」だけでは曖昧です。商談後の対応内容は商談担当者が更新し、担当変更時は営業管理職が引継ぎ先を確認する、といった作業単位まで決めてください。入力方法に迷った際の相談先や、項目を変更したいときの受付担当も決め、現場から出た疑問を誰が処理するかを残します。

少人数の組織では兼任しても構いませんが、担当者の名前だけでなく、確認する作業と確保する時間を記録します。社内に技術担当者がいない場合は、提供会社へ確認を依頼する範囲と、その回答を受け取る社内担当者を決めましょう。外部へ設定作業を依頼しても、自社の業務で使えるかを判断する役割は社内に残します。

費用とスケジュールを決める前に確認すること

CRM導入の予算と日程を決めるには、利用する範囲と社内で担う作業をそろえる必要があります。利用料に加え、データ整理や教育まで含めて、誰が何を担当するかを確認しましょう。

利用料以外にかかる初期費用と運用費を洗い出す

CRM導入の費用は、利用人数、移行するデータ量、他システムとの連携、外部に依頼する作業によって変わります。条件が決まっていない段階では総額を断定せず、初期費用と継続して発生する運用費を分けて見積を取りましょう。

見積を比べる際は、金額と併せて、どこまでの作業が含まれるかを確認します。データの取込みを依頼できても、重複の整理や項目の対応づけを自社で担うなら、その作業時間と担当者を別に確保する必要があります。

次の表は、見積範囲をそろえるための整理例です。「含む・別途・未確認」を記入し、未確認の項目には問い合わせる相手を割り当てると、予算決裁までに残る作業が明確になります。

費用区分確認する条件社内外の担当例見積への含有状況
アカウント・利用料対象人数、利用範囲、契約期間、追加利用時の条件を確認します。利用者の整理と提供元への費用確認は、営業企画の担当です。含む・別途・未確認を記入します。
初期設定入力項目、画面、権限など、設定を依頼する範囲を確認します。要件の整理と設定担当の決定は、営業企画と情シスの担当です。含む・別途・未確認を記入します。
データ移行整理、変換、取込み、照合のうち、依頼する作業を確認します。分担するのは、データの管理部署と移行担当です。含む・別途・未確認を記入します。
他システムとの連携接続先、連携する項目、確認作業、変更時の対応範囲を確認します。関係する提供元との調整は、情シスの担当です。含む・別途・未確認を記入します。
教育・利用開始時の支援対象部署、説明する業務、操作練習、質問対応の範囲を確認します。社内外の分担を決めるのは、営業管理職と教育担当です。含む・別途・未確認を記入します。
保守・運用問い合わせ対応、設定変更、連携の保守などを確認します。決める必要があるのは、社内の運用担当と外部の支援担当です。含む・別途・未確認を記入します。

社内担当者の作業時間と外部への支払額は、区別して管理する対象です。外部見積に含まれる作業を重ねて費用計上しないよう確認し、未見積の項目をゼロとして予算を確定しないことが大切です。予算に収まらない場合は、必須業務を残したうえで、追加機能や対象部署の導入時期を見直しましょう。

先に完了すべき作業を踏まえて導入期間を見積もる

導入期間は、各作業に必要な時間と、前の作業が終わるまで着手できない工程を分けて見積もります。利用人数だけで開始日を決めず、要件の合意、データ整理、連携確認、試行、教育、本番切替を日程に落とし込みましょう。

特に確認したいのは、判断待ちが発生する作業です。顧客データの重複を誰が判断するか決まっていなければ、移行担当が準備を進めても統合対象を確定できません。作業日数に加えて、確認する担当者と回答期限を記録します。

一方、移行対象の整理と並行して、現場の試行参加者や教育に使う業務例を選ぶことは可能です。教育内容の確定には実際の画面や入力ルールが必要になるため、先に準備できる部分と設定完了後に確認する部分を分けます。

本番切替日は、試行で見つかった問題を直し、再確認する時間も含めて判断します。必要な業務が動かない場合は、対象範囲を縮めるか日程を調整し、未解決のまま全社へ広げない方針を決裁者と共有しましょう。その判断の基準になるのが、移行データと試行結果の確認です。

要件と入力ルールを整理してCRMを選ぶ

工程表の担当者を決めたら、今回の導入で解決する営業課題を要件表へ落とし込みます。必要なデータと使う場面を結びつけ、どこまでを初回導入に含めるかを関係者で確認しましょう。

営業課題の解決に必要なデータを選ぶ

ZohoのCRM導入準備ガイドでは、誰が、どの場面で、どの情報を入力するかを整理し、必要な項目を選ぶ進め方が紹介されています。自社の要件表には項目名に加え、更新担当者と、その情報を使う判断を記入しましょう。

以下は、課題から必要なデータと機能を整理するための編集上の提案です。入力項目の一例であり、特定製品の対応機能や導入実績を示してはいません。自社で困っている場面に置き換え、今回の導入に欠かせない行だけを要件表へ移してください。

営業課題の例情報を使う場面必要なデータの例必須機能として確認すること
担当変更時に対応経緯が分からない後任が顧客へ連絡する前に確認します。顧客名、担当者、対応日、対応内容、次回の約束顧客ごとに履歴を確認でき、後任へ閲覧権限を引き継げるかを確認します。
次に誰が何をするか決まっていない利用場面は、営業会議で担当者と次回行動を決めるときです。案件名、進捗、次回行動、期限、担当者担当者別・期限別に対象案件を絞り込み、会議中に更新できるかを確認します。
顧客への対応が部署間で重複する連絡前に他部署の対応状況を確認します。顧客を識別する番号、対応部署、最終対応日、対応内容確認点は、必要な部署間で同じ顧客の履歴を共有し、閲覧範囲を設定できるかです。

既存の営業支援システムであるSFAや、マーケティング業務を支援するMAを利用している場合は、CRM・SFA・MAが管理する情報と役割の違いを確認し、同じ情報をどの部署が管理しているかを整理します。名称だけで機能の重複を判断せず、どちらの記録を最新情報として扱い、誰が更新するかを決めましょう。初回導入では営業管理職と必須項目を絞り、後で追加する項目には再検討する条件を残します。

営業AI・営業DX title/H1: CRMとは?営業成果につなげる基本と使い方

製品を絞る際は、この体制で対象業務を運用できるか、現行システムとの連携や権限設定に対応するかを確認します。入力の手間、設定変更の担当、稼働後の問い合わせ先も要件表に加え、未確認の機能は提供会社への質問として残してください。対象範囲と社内外の分担がそろったら、その条件で必要な費用と日程を見積もります。

参考:CRM導入フェーズでやるべき準備と落とし穴|Zoho CRM

営業会議での活用方法に合わせて入力ルールを決める

入力ルールは、営業会議で何を判断するかから逆算して決めます。入力する側と使う側で目的を共有するには、各項目の更新担当者、更新する場面、期限、確認する管理職の対応づけが有効です。

次回行動と予定日を記録する場合は、会議で期限を過ぎた案件を確認し、担当者と次の対応を合意する使い方が考えられます。次の表は入力と利用を結び付ける設計例です。自社の会議で実際に判断する内容に合わせて、必要な項目を選びます。

入力する情報会議での判断決める次回行動確認する指標
次回行動・予定日期限を過ぎた理由と、対応を続ける必要性を確認します。合意するのは、担当者、具体的な対応、実施期限です。合意した期限までの実施状況を確認します。
商談の進捗・更新日進捗に変化がない理由と、確認すべき相手を判断します。決めるのは、不足情報を誰に確認するかです。更新の遅れと、確認後の進捗を追います。
顧客の対応履歴引継ぎに必要な情報がそろっているか確認します。必要な行動は、未確認事項の補完と、次の担当者の決定です。必要情報の充足と、引継ぎ後の対応状況を確認します。

更新されない項目が続く場合は、現場の入力負荷と、管理職がその情報を使っているかを併せて確認します。二重入力や使い道のない必須項目があれば、運用担当が見直す対象です。CRMへの記録だけで会話の質や受注が改善すると考えず、記録を使って決めた行動が実施されたかまで追いましょう。

入力ルールを決めるときは、CRMに何を記録するかより先に、営業会議でどの数字を見て判断するかを決めておくと、使い道のない必須項目を減らせます。売上目標から見るべき数字を分解する手順は、次のガイドで確認できます。


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データ移行・権限・連携の準備を進める

移行前に、元データの所在、移す項目、権限、既存システムとの連携範囲を整理します。社内で決める内容と提供会社に確認する内容を分け、担当者と未決事項を記録しましょう。

顧客データの重複を解消し、表記と項目を整える

まず元データを保持し、移す対象と、移行元・移行先の項目の対応を整理します。顧客を区別する番号などの識別情報、必須項目の欠損、日付や名称の表記を確認し、修正した内容を元の行までたどれるように記録しましょう。

ZohoのCRM導入準備ガイドでは、既存データの所在、重複、古い情報、表記の違いを確認し、移行する項目を整理する手順が示されています。ここで扱う顧客名の照合例は、その準備を説明するための模擬例です。

説明用の模擬例として、部署ごとのExcelに「株式会社あおば」と「あおば(株)」が登録されている場面を考えます。表記が似ていても名称だけで統合せず、既存の顧客番号や所在地などとの照合が必要です。同じ顧客と判断できない行は確認対象に分け、営業担当者など事情を把握する人へ確認を依頼します。

重複を統合するときは、残す顧客情報と、引き継ぐ対応履歴をセットで決めます。欠けている項目を推測で埋めず、確認者・確認期限・未解決の理由を残すことが大切です。整理の完了後は、整えた情報が移行先で正しく結び付くかを試行で確かめます。

旧台帳とCRMを並行して使う期間は、どちらを最新情報の基準とするかを決めます。試行用にデータを取り出した後の追加・変更・削除を記録し、本番切替までに誰が反映するかを明確にしましょう。両方で更新する必要がある場合は、内容が食い違ったときの確認担当も決めておきます。

参考:CRM導入フェーズでやるべき準備と落とし穴|Zoho CRM

試行運用で確認してから本稼働へ移る

本稼働の前に、移行データ、権限、日常業務を実際に試し、切替条件を満たしたか確認します。重大な欠損や必要業務の停止が残る場合は切替を見送り、修正後に再確認しましょう。

試行でデータを照合し、本番切替と切り戻しの条件を決める

試行では、件数の照合に加え、顧客と対応履歴の関係、閲覧・編集権限、入力から営業会議での利用までを確認します。次の表は受入条件を整理するための例です。全件を確認する項目と代表データで確認する項目を分け、自社の業務上許容できる条件を試行前に定めましょう。

確認項目期待する状態結果未解決事項判断担当の例
移行件数移行対象と取込み結果を全件集計し、除外・統合した分も含めて差を説明できます。記入するのは、実測件数と差です。差の原因と再確認日を記入します。照合は移行担当、確認はデータ管理担当の役割です。
必須項目・識別情報全件の欠損・重複を点検し、業務上必要な情報を確認できます。確認範囲と判定を記入します。記入するのは、不足項目と確認者です。営業企画とデータ管理担当が判断します。
顧客と対応履歴の関係通常の顧客と統合・修正した顧客を確認し、履歴の参照先が一致します。記入するのは、確認した顧客と結果です。誤った対応づけと追加確認範囲を記入します。確認するのは、営業担当者と移行担当です。
閲覧・編集権限役割ごとの利用者で確認し、必要な操作ができ、権限外の情報や操作を制限できます。役割別の結果を記入します。記入するのは、修正する権限と再確認日です。情シスと業務責任者が判断します。
日常業務担当者が情報を更新し、管理職が会議で参照して次回行動を決められます。記入するのは、試した業務と結果です。止まった操作や不足情報を記入します。判断するのは、現場代表と営業管理職です。
切替・元の運用への復帰更新分を反映し、問題が起きた場合に合意した手順で業務を再開できます。試した手順と所要時間を記入します。記入するのは、戻せない情報や残る作業です。情シスと営業責任者が判断します。

元の運用へ戻す「切り戻し」は、バックアップがあるだけでは実行可能と判断できません。製品ごとの復元方法と切替後に増えた情報の扱いを確認し、戻す手順を事前に試します。重大な欠損や必要業務の停止が残る場合は切替を見送り、解消・再試行の結果を基に営業責任者と情シスが改めて判断します。

教育では、操作画面の説明に加え、実際の業務に沿って入力から会議での確認までを練習します。担当変更や対応予定の延期といった例外も扱い、操作や記入内容に迷ったときの問い合わせ先を明確にしましょう。

本稼働後に確認する指標と担当者を決めておく

試行中に、本稼働後に確認する運用指標と成果指標、集計担当者、評価時点を決めておきます。導入前の記録がない項目は「未取得」とし、比較できる条件がそろうまで改善の断定を保留します。

本番運用が始まったら、確認すべき点は、入力した情報が営業の判断と行動に使われているかです。日々の利用状況と営業成果を分けて記録し、改善する作業を具体的に選びましょう。

CRM導入の効果は、利用率や更新状況などの運用指標と、受注率などの成果指標を分けて確認します。対象案件・分母・期間をそろえて導入前と比較し、基準値がない場合は記録を始め、改善の断定を保留します。

ログインした人数が増えても、必要な項目の更新や次回行動の決定まで進んでいるとは限りません。入力・更新・会議での利用を順に確かめると、操作支援が必要なのか、項目や会議の進め方を見直すべきなのかを切り分けられます。

次の表は、自社で測定条件を決めるための指標案です。導入前基準値には測定した値と期間を記入し、測っていない場合は「未取得」と記録します。担当欄も部署名だけで終わらせず、集計と評価を行う人まで決めましょう。

指標分母・対象範囲導入前基準値測定担当の例評価時点
利用率対象期間に更新・参照などの指定業務を行った人数を、利用対象者数で割ります。既存環境で同じ行動を測れる場合に記入し、比較できない場合はその理由を残します。割り当てるのは、運用担当です。対象期間と集計日を決めます。
必要項目の充足率記入対象の案件数に対する、合意した必須項目がそろう案件数の割合です。導入前の値と測定期間、または未取得を記入します。営業企画の集計担当を決めます。会議前など、確認時点の固定が必要です。
更新遅延率更新期限を過ぎた案件数を、その期間に更新が必要だった案件数で割ります。導入前の値と測定期間、または未取得を記入します。更新ルールに沿った集計は、運用担当の役割です。同じ長さの期間で比較します。
次回行動の決定率会議で行動・担当者・期限を合意した案件数を、次回行動を決める必要があった検討案件数で割ります。確認元は導入前の議事記録などで、未取得ならその旨の記入が必要です。営業管理職が会議記録を確認します。各会議後に記録し、期間をそろえて集計します。
受注率同じ条件の受注・失注が確定した案件数に対する、対象商材などの条件をそろえた受注件数の割合です。導入前の値と対象期間、または未取得を記入します。営業企画が案件の確定状況を確認します。決定に当たって考慮するのは、営業活動から結果確定までの時間です。

受注率を比べる際は、商材、人員、対象顧客などの変化も記録します。導入前後の差だけでCRM単独の効果とは断定せず、継続中の案件を失注扱いせずに残すことが大切です。集計できた案件が少ない場合は、率と併せて件数を示し、評価を急がないようにしましょう。

費用対効果を説明する場合も、作業時間の削減と実際の支出削減を区別します。削減した時間を別の営業活動に使っていても、そのまま支払額が減ったことにはなりません。利用状況、行動の変化、成果、費用を分けて報告し、次に見直す作業と担当者を決めます。

CRM導入準備表で担当者と未決事項を整理する

次の準備表は、社内で決めることと未決事項を整理するための編集部提案です。各工程の担当者、残す成果物、試行で確認する条件を記入し、未決事項には確認先と期限を添えましょう。

工程担当者決めること残す成果物試行での確認条件未決事項
目的と対象業務担当者・確認者を記入します。解決したい課題と今回扱う業務を記入します。対象業務一覧を残します。対象業務を実行できるか確認する条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
予算と担当範囲担当者・承認者を記入します。社内外の分担、見積範囲、未見積の作業の扱いを記入します。見積範囲表・役割分担表を残します。合意した分担で必要な作業を担えるか確認する条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
要件と選定条件担当者・確認者を記入します。必須要件と今回見送る要件を記入します。要件表・選定記録を残します。必須業務と機能を確かめる条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
入力項目と更新担当更新担当者・確認者を記入します。入力項目、更新する場面、期限、会議での使い道を記入します。入力・更新ルールを残します。入力から会議での利用までを試す条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
移行元と重複処理移行担当者・データ確認者を記入します。元データの所在、移す項目、重複の扱い、差分反映の方法を記入します。移行仕様・照合手順を残します。件数、必須項目、顧客と履歴の関係を照合する条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
権限と連携範囲設定担当者・確認者を記入します。役割別の権限、接続先、連携する項目、社内外の確認範囲を記入します。権限設定と連携範囲の記録を残します。必要な操作、権限外の制限、連携結果を確認する条件を記入します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
試行運用試行担当者・切替判断者を記入します。受入条件、教育内容、本番切替と切り戻しの条件を記入します。試行記録・切替判断記録を残します。重大な欠損や必要業務の停止がなく、合意した手順で運用できるか確認します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。
本運用後の確認集計担当者・評価担当者を記入します。運用・成果の指標、対象範囲、基準値、評価時点を記入します。指標定義と利用状況・評価の記録を残します。必要な記録を取得・集計できるか確認し、未取得の項目を明記します。未決事項・確認先・回答期限を記入します。

次の工程に影響する未決事項から、確認担当者と回答期限を決めます。確認が終わるまでは、その条件に依存する作業の完了を判断しないようにしましょう。

まとめ|担当者と完了条件に未決事項がないか確認する

CRM導入では、目的・要件・担当体制を固め、費用と日程の条件をそろえてから、移行と試行を進めます。工程ごとに成果物と判断担当者を決め、必要な業務を実行できるかを確かめて本番切替を判断しましょう。

稼働後は、情報の更新状況に加え、営業会議で次回行動を決めるために使われているかを確認します。導入効果は対象案件や期間をそろえて評価し、受注率などの変化だけでCRM単独の効果とは断定しないことが判断の前提になります。

まずは、工程表の中で担当者や完了条件が決まっていない作業を一つ選び、関係者と確認しましょう。

CRMで追う数字がまだ決まっていない場合は、未決事項を関係者と確認する前に、売上目標から見るべき数字を分解する手順を確かめておきましょう。


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谷本潤哉
元電通、2016年創業。株式会社FAZOM代表取締役。自らの組織崩壊を原点に、営業プロセスを数字で再現する独自メソッド「メトリクスマネジメント」を体系化。累計200社超の営業組織を支援し、売上向上・新人の早期戦力化など成果を創出。